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映画『ブルーム・オブ・イエスタデイ』を観る

昨日のキネ旬シアターは『ブルーム・オブ・イエスタデイ』でした。

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監督:クリス・クラウス

主演:ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース

制作:ドイツ・オーストリア 2016年

 

ドイツ・ナチスホロコーストをテーマにした一種の恋愛映画です。

 

ホロコーストの研究家であるトトは次の「アウシュビッツ会議」の議長になりたいため研究を続けていますが、そのエキセントリックな性格を気にして教授はライバルのバルタザールにその任を任せてしまいます。トトは怒り狂いバルタザールに殴り掛かります。その間、教授は心臓マヒを起こし死亡してしまいます。

フランスから会議の助手を務める女性ザジが会議の手伝いにやってきます。ザジはバルタザールと関係を持っていますが、目的は一面識もないトトに会うためでした。

トトの祖父はかつてナチスの親衛隊の大佐でユダヤ人虐殺に関係していました。トトは祖父を弾劾するためホロコーストの研究家になっていました。その為親兄弟からは憎まれていました。

ザジの祖母はユダヤ人でナチスに殺されました。ザジはホロコースト研究家のトトに対し以前から興味を持っていたのです。それにはまた別な真の理由があったのです。

バルタザールの指示で空港にザジを迎えに行ったトトは使っている車の車種がベンツだということでいきなりいちゃもんをつけられ喧嘩になってしまいます。その後も顔を合わせるたびに口論になります。2人とも精神状態が不安定なのです。

トトは性的不能者で妻がほかの男性と性的関係を持つのを公認しており、黒人の幼女もとっています。公認はしているものの、嫉妬で狂いそうになります。一方ザジも情緒不安定で自傷行為を繰り返します。

ある日、トトはザジの持っている本を見て驚きます。そこには祖父の幼少の頃の写真が写っています。そして隣に写っていたのはザジの祖母でした。2人の祖父母は小学校の同級生同士だったのです。そしてトトの祖父がザジの祖母を殺したのかもしれないという思いがよぎります。ザジがトトに会いに来た本当の理由はここにあったのです。

アウシュビッツ会議を成功させるために出席予定者の確認を得るために2人はウィーンに派遣されます。ところがその人物がちょうどその日死亡していたのです。2人はウィーンにそのまま滞在しレストランで食事をし、急速に接近しますが、トトはザジを誘おうとはしません。ザジは理由を聞きます。そしてとうとう性的不能者の秘密を打ち明けます。

しかしその夜二人は結ばれます。そして、2人の祖父母が幼少期を過ごしたラトヴィアのリガに向かいます。そして墓地や写真にあった学校の教室をめぐります。そして2人は結婚の約束をします。ザジは昨日子供が出来たような気がすると言います。喜ぶトトは名前はどうしようかと言うと、ザジが「ミカエル」はどうかしらと答えます。

トトは妻に離婚を申し出て家を出ます。ザジもバルタザールに別れを告げますが、バルタザールはトトの過去を調べ上げ、刑務所に収監されているトトの兄のところにザジを連れていきます。

そこでザジはトトがネオ・ナチだったことを聞かされます。ザジはトトとの婚約を解消します。トトはそれは若い頃の話だと懸命に説得しますが、ザジは聞き入れず結局去っていきます。

5年の歳月が流れ、場所はニューヨーク?。黒人の娘とクリスマスの買い物をするトト。そこにザジが現れます。子供を連れています。トトは子供に「坊や年はいくつ?3歳?4歳?」と訊ねます。子供は答えず、ザジが一瞬、間が空き「3歳、名前はトーマス」と答えます。ザジは今はインドの女性と暮らしている、幸せだと言います。ザジは娘を見て、「あの時の子がこんなに大きくなって」と言って笑顔で帰っていきます。トトは「男の子か」と言いますが、娘が「違うよ、さっきミカエルって呼んでたよ」と言います。

ホロコーストに関する新しい映画かと思って、それなりの心づもりで見始めましたが、どうやらそうではなくて、過去を引きずる加害者と被害者が果たして和解できるのか、という視点で観たほうが分かり易いかもしれません。性的不能者が新しい恋人を得て回復しますが、やがてまた食い違いが生じ別れる。そして時は流れ、2人の愛し合った証は生きています、という物語。こう解釈すると分かり易いラブストーリーです。

ただ監督の狙いは何だったのでしょう。ホロコーストの場面も一切なく、過去の証人も語ることはありません。ただホロコーストというテーマだけが根底に存在しています。監督自身は祖父とその兄がナチスの高官だったらしく、そのことに強いショックを受けたようです。この映画では直接的にホロコーストについて語るのではなく、孫世代としてホロコーストをどのように感じ、受け止めるのかを自由に考えてみて下さいと言われているような気がしました。

 


ナチス戦犯を祖父に持つ男と、ユダヤ人女性が恋におちたら…『ブルーム・オブ・イエスタディ』予告編

 

それでは今日はこの辺で。