ジェスロ・タル(以下、タル)を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。ブルースか、ジャズか、ロックか、フォークか、すべて当てはまるようで、すべて当てはまらない、不思議なバンドでした。イアン・アンダーソンのフルートとヴォーカルを前面に押し出した音楽は初めて耳にするようなロック・ミュージックでした。現に彼らはニューポート・ジャズ・フェスティバルで人気を博したように、ロックのライブよりもジャズのフェスティバル等に主演する機会のほうが多かったのです。イアン・アンダーソンの尊敬する人物がローランド・カークということですから、さもありなんです。
ちなみにジェスロ・タルというのは17世紀のイギリスの農学者の名前です。種子播き機械の発明や良種の選択の重要性を唱え、イギリスの農業に強い影響を与えた学者だったらしいです。
初めて聴いたアルバムがセカンドアルバムの『Stand Up』でした。1969年のリリースです。このアルバムは全英1位を記録します。
ジャケットがまた素晴らしいのです。
Side A
1.A New Day Yesterday
2.Jeffrey Goes To Leicester Square
3.Bouree
4.Back To The Family
5.Look Into The Sun
Side B
1.Nothing Is Easy
2.Fat Man
3.We Used To Know
4.Reason For Waiting
5. For A Thousand Mothers
タルのオリジナル・メンバーは
イアン・アンダーソン(Ian Anderson,flute,vo,aco.g,key,mandlin)
グレン・コーニック(Glen Cornick,b)
クライヴ・バンカー(Clive Bunker,ds)
ミック・アブラハム(Mick Abrahams,g)
でしたが、ファーストアルバムのリリース後ミック・アブラハムが脱退、代わってマーティン・バレ(Marttin Barre,g,flute)が加入します。ミック・アブラハムはブラッドウィン・ピッグを結成します。
A-1のイントロを聴いた途端度肝を抜かれました。ヘヴィーなベースに重々しいギターが絡みイアン・アンダーソンの端正なヴォーカル、そしてフルート。いやあ、参りました。ブルースのようなイントロですがまさにヘヴィーロックです。彼らの代表曲の一つです。
A-2は変わって、トラッドフォークのような曲です。
A-3は代表曲「ブーレ」。イアンのフルートを前面に押し出したとても美しい曲。クラシックの前奏(バッハ)から、中盤はジャズです。これを聴いているとタルがロック・バンドであることを忘れてしまいます。
A-4は再びヘヴィーなナンバー。マーティン・バレの地味なギターがいいですね。
A-5はイアンのラブソング。ビートルズを思わせるようなきれいな曲。
B-1はこれも代表曲の一つです。ロックンロールにジャズを融合させたような曲です。
B-2これはアフリカのリズムと東洋の音楽を混ぜ合わせたような不思議な曲。
B-3は一転バラードナンバー。フルートとマーティンのギターの絡みが最高。特にここではマーティンのソロがたっぷり聴けます。
B-4これまた美しいナンバー。ストリングスまで入った別なタルを見せられます。
B-5ラストはハードなナンバー。タルらしいフルートがふんだんに入り、イアンのヴォーカルが唸ります。
私はこのアルバムがすっかり気に入り、すぐにファーストアルバム『This Was(日曜日の印象)』を購入しました。
これも期待を裏切らないで出来でした。
そしてサードアルバム『Benefit』、4枚目のアルバム『Aqualung』と続きます。
『Aqualung』は傑作の誉れ高い名盤でした。
その後、1972年に『Thick As A Brick』をリリースします。
A,B両面で1曲という画期的な大作アルバムでした。
この頃から、タルはプログレッシブロックの範疇に入れられることが多くなりました。私にはどうもそうは思えないのですが。この後も『ロックンロールにゃ老(とし)だけど死ぬにはチョイと若すぎる』なんていう素晴らしいロックオペラアルバムを作っているのですから。
それにしてもタルのレコードジャケットはどれもこれもなんてすばらしいのでしょうか。
最近(といっても10年程前)、初期のアルバムのデラックスエディションが発売されましたが、ジャケットまでデラックスです。
タルは今でも時々聴きますが、私にとってはこの『Stand Up』は特に『Aqualung』と共に忘れられない1枚となりました。
A New Day Yesterday-Jethro Tull
それでは今日はこの辺で。