青春の苦い思い出話を一つ。全くの個人的な話ですので、お忙しい方はどうぞ読み飛ばして下さい。
久しぶりに聴いたレコードからふと思い出した、昔懐かしい、お恥ずかしい、女々しいお話です。
大学に入学が決まり東京へ出て参りました。東京の生活にも少しづつ慣れて、家を離れた解放感から自由で伸び伸びと学生生活を謳歌していました。
そんな時、夏休み前の初めての定期試験のため、少しは試験勉強をしようなどと、珍しいことを思いつき友人と下宿先の地元の図書館へと向かいました。これも神様の仕業だったのでしょう。
そこで地元のある女子高校生と知り合いました。当時のアイドル女優で歌手の、浅田美代子そっくりの凄くかわいい女性でした。年齢も浅田美代子と同じくらいだったと思います。一目惚れです。いっぺんに恋に落ちました。彼女も同様でした。それからは頻繁にデートを重ね、電話は毎日のようにしていました。夏休み中は私も田舎でバイトをしていましたが、休みを見つけては東京に戻り、彼女も飛んできました。待ち合わせ場所に手を振りながら笑顔で走って来る姿はいまでも忘れられません。私の下宿(4畳半のアパート)で過ごすこともありました。胸が熱くなるような手紙ももらいました。一日の別れも本当に辛かったのです。(写真は浅田美代子の若い頃)
そんな天にも昇るような楽しい日々は永遠に続くと思っていたのですが、ある日突然その恋は終わりを迎えました。彼女から一方的に別れを告げられたのです。何度聞いても泣いているばかりで理由を話してくれません。
「好きだけど、別れなければ・・・」なんて訳も分かりませんでしたが、どうにもならずあきらめざるを得なくなりました。初めての大失恋でした。それまでにも失恋経験は人並みにありましたが、これほどのショックは初めてでした。それ以降、二度と彼女に会うことはありませんでした。それでも幸いなことに女性不振とはならず、結局「ただ単に振られたのだ」ということで自分を無理矢理納得させたのでした。
そんな時に聴いていたのがフリー(Free)の『ハートブレイカー(Heartbreaker)』というアルバムでした。
Side A
1.Wishing Well
2.Come Together In The Morning
3.Travellin' In Style
4.Heartbreaker
Side B
1.Muddy Water
2.Common Mortal Man
3.Easy On My Soul
4.Seven Angels
1973年、フリーの通算8枚目のアルバムになります。ちょうど発売されたばかりでした。タイトルからして、その時の気分にピッタリです。このアルバムを毎日何回となく聴いていました。特にA面はレコード盤が擦り切れるぐらいに聴きました。
当時「ハートブレイカー」というタイトルの曲はレッド・ツェッペリンやグランド・ファンク・レイルロードにもありましたが、私にとってはこのアルバムの「ハートブレイカー」です。
オープニングの「ウィッシング・ウェル」から2曲目の「カム・トゥゲザー・イン・ザ・モーニング」、そして「トラヴェリング・スタイル」から「ハートブレイカー」への流れが何とも言えません。ポール・ロジャースの抜群のヴォーカルとポール・コゾフの泣きのギター、そして重々しいサウンドが当時の傷ついた心に沁み入りました。
フリーはこのアルバムを最後に解散してしまいます。何か自分の運命と重ね合わせ、ますます落ち込んだ記憶があります。
その頃、私の従兄も同じような経験をしており、会うたびに未成年のくせして一升瓶を片手に飲み明かし、荒れ狂いながら慰め合ったものでした。「二度と恋などするものか!」などと。
この後もしばらく立ち直れない日々が続きましたが、やがて新たな恋も始まり、その傷は少しずつ癒えていきました。フリーに助けられたようなものでした。
レコードを聴くと当時のことが良かったことも悪かったことも走馬灯のように蘇ります。やはり音楽とはいいものです。
しかし、「人生一難去ってまた一難」とはよく言ったもので、この後もいまだに胸が苦しくなるような、様々な経験が待ち受けているのでした。それはまだ書ける気持ちには至っていません。人間長く生きていると様々な経験をするものです。
昨今、色々なことを忘れることが多くなって、これはまずいな、と思いこのようなことも書き残しておこうと思って書いた次第です。十分時間も経っているので、まあいいかと女々しいながらも恥を忍んで書きました。これも我が青春のほろ苦い、ほんの1コマでした。そんな時代もあったのです。
私はこんな年になりましたが、彼女も同じように年を取っているはずなのに、浮かんでくる姿は昔のままです。思い出はいつでも美しいのです。いや、そうあってほしい。苦い思い出もいつしか懐かしく思えるようになることを期待して。
Come Together In The Morning / The Free
それでは今日はこの辺で。