Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

訃報 ジャン=ポール・ベルモンド & 聴き比べ 『鳳仙花』

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またしても訃報が入りました。フランスの名優、ジャン=ポール・ベルモンドが亡くなりました。88歳でした。フランス映画の黄金時代を支えた名優でした。特にジャン=リュック・ゴダール監督の勝手にしやがれ』や気狂いピエロにはしびれました。タバコを吸いながら親指で唇を拭う仕草を真似したものでした。

また同じくフランス映画の代表的俳優で盟友のアラン・ドロンと競演した『ボルサリーノ』もかっこよかった。あの頃はファン層もベルモンド派とドロン派に別れていたような気がします。その二人が競演するというので大変な話題になりました。

カトリーヌ・ドヌーヴとの『暗くなるまでこの恋を』アニー・ジラルドとの『あの愛をふたたび』など恋愛映画もありました。そして『リオの男』カトマンズの男』などの『男』シリーズなどアクション映画もありました。私の青春時代を大いに楽しませてもらいました。ありがとうございました。

慎んでご冥福をお祈りします。合掌。

 

さて、今日の「聴き比べ」は『鳳仙花』です。

 

私がこの曲を知ったのは、加藤登紀子さんのベストアルバムを聴いた時だったと記憶しています。今から20年以上前でしょうか。ちょうど彼女の「百万本のバラ」が流行っている頃だと思います。

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多くの知られた曲に交じってこの曲も収録されていました。一聴していい曲だな、と思いました。てっきり彼女の自作かと思ったのですが、作詞も作曲も朝鮮名でした。

ちょっと調べてみると、作曲家の洪蘭坡(ホン・ナンパ)という人は韓国でも北朝鮮でも超が付くほどの有名な作曲家で、この曲も国民歌と呼ばれるほど親しまれている曲のようでした。

洪蘭坡は1897年の生まれで、現在の東京芸術大学に入学しました。その後、1919年の三・一朝鮮独立運動に参加しましたが、敗北。その時にこの「哀愁」という曲を作り、6年後には金享俊(キム・ヒョンジュン)が詩を付けて出来上がったのが「鳳仙花」でした。朝鮮民族の悲哀さと独立を鳳仙花になぞらえた、それこそ哀愁漂う曲でした。

しかし、日本の官憲はこの「鳳仙花」を抗日の歌として捉え、洪蘭坡を危険思想の持ち主として監視し、捕らえ拷問まで与えました。その拷問の影響なのか、彼は1941年に43歳の若さで亡くなりました。彼の死後、1942年に日本に留学中のソプラノ歌手の金天愛(キム・チョンエ)がこの歌をコンクールで歌い、レコード化することで自国の大衆に知られるようになりました。日本の官憲は当然この曲を歌唱禁止にしましたが、朝鮮人たちは密かに歌い続けました。。

「鳳仙花」はその後も抗日の歌として歌い続けられましたが、2000年代になって洪蘭坡は戦時中、日本軍に協力したとして親日家のレッテルを貼られました。洪蘭坡は拷問の後、「転向」し、軍歌などの作曲を命じられこれに応じていたのです。2009年になって、遺族が提訴したことからようやく親日家リストからは除外されたそうです。

 

一方、この曲を偶然聴いた加藤登紀子は、1990年、この曲を是非歌いたいと思い、ソウルでのコンサートの前に記者団に聞いたところ、「日本人がこの曲を歌うことを誰も許さないだろう」との答えが返ってきました。加藤は「一度聴いてみて欲しい」と言って歌いだしました。歌い終わって感想を聞いたところ、「歌うなら、もう少し上手な韓国語で歌って欲しい」と言われ、韓国語の特訓をすることで許可が出たそうです。コンサートの直前、加藤登紀子は洪蘭坡夫人に会い、夫人の目の前で習った韓国語で歌いました。歌い終わると、夫人は涙を流し、二人は抱き合ったそうです。

 

そんなこの楽曲の歴史を知ると余計に重さが伝わってくるようです。

韓国内で日本語で歌を歌うこと韓国政府に許されたのは1998年、韓国人の母親を持つシンガー・ソングライター沢知恵でした。

 

鳳仙花

作詞:金亨俊

作曲:洪蘭坡

日本語訳:船津建

 

垣根に咲いた鳳仙花

お前の姿が痛ましい

長い長い夏の日に

美しく花ひらくとき

花も恥じらう乙女らが

お前とたのしく戯れた

 

いつのまにか夏がゆき

秋風そよと吹いてきて

美しかった花ぶさを

見るも無残にむしばむと

散り落ちながら萎れゆく

お前の姿が痛ましい

 

雪降る冬の北風に

お前の姿消えようと

平和の夢を見続ける

その魂はここにあり

うららかに吹く春風に

よみがえる日を待ち望む

 

加藤登紀子さんのバージョンは

 

作詞:金亨俊、金護経

訳詞:加藤登紀子

 

赤いほうせん花 お庭に咲いたよ
灼けつく夏の日 暑さも知らずに
かわいい娘は 爪先染めたよ

赤いほうせん花 お庭に咲いたよ
やがて夏去り 秋風吹けば
ほうせん花種蒔け 遠くへはじけよ

 

赤いほうせん花 お庭に咲いたよ
灼けつく夏の日 暑さも知らずに
かわいい娘は 爪先染めたよ

 

朝鮮では鳳仙花の花で爪を染める風習があったそうです。

 

金天愛の歌唱。


봉선화 - 홍난파, 노래: 김천애 (1940 년대 녹음)

 

 


North Korean Song "Garden Balsam" 北朝鮮歌謡「鳳仙花」

 


加藤登紀子 - 鳳仙花

 

それでは今日はこの辺で。