先日のキネ旬シアターは『パンケーキを毒見する』でした。
監督:内山雄人
出演:菅義偉
製作:2021年 日本
先日観た『i -新聞記者 ドキュメント-』の制作プロデューサーの内山光庸が企画・製作・プロデュースをした作品です。
第99代内閣総理大臣・菅義偉をブラック・ユーモアを交え、その素顔を追ったドキュメンタリーです。
残念ながら?、菅政権の1年という短期政権がまもなく終わりますが、映画の中ではまだ菅政権続行中です。
「パンケーキ」とは甘党の菅義偉の好物だそうです。記者との懇談会などではパンケーキが出てくるそうです。いわゆるパンケーキ懇談会です。そうしたことからこの映画のタイトルが付けられたようです。
映画は菅の息のかかった議員や評論家、行きつけのホテルやスイーツ屋などからはすべて取材拒否されます。ましてや本人へのインタビューなどは一切ありません。
一方で石破茂、江田憲司、村上誠一郎や元官僚の前川喜平、古賀茂明、さらに評論家の森功、鮫島浩、大学教授の上西充子などのインタビューから菅の人となりや政治手法を暴いていきます。皮肉っぽいアニメーションなども交えて、まさにブラック・コメディといった作品です。
面白かったのは上西教授が菅の国会答弁、いわゆる『ご飯論法』を解説する場面です。ニュースなどでは切り取られて報道されるため、その詳細がわかりませんが、日本学術会議の任命問題でのやり取りをノーカットで再現し、解説する場面です。菅の答弁は全く答えになっていません。思わず笑ってしまいました。わざと惚けているのか、それともアホなのかよくわかりません。おまけに次の総裁候補の河野太郎は居眠りしていました。
映画では菅義偉の人物評価もさることながら、日本社会の劣化も同時に報じています。様々な指標(経済・人道・報道等)で国際的に急落、あるいは依然として低迷している状況なども報じられます。これらの原因は政治の劣化だと結論付けています。
ここから年寄りのボヤキです。
第二次安倍内閣が誕生してから丸9年が経とうとしていますが、この間日本の政治と社会は大きく変わったような気がしてなりません。
安倍内閣が掲げたアベノミクスは結局は富裕層をさらに富ませ、新たな貧困層を作り上げました。大企業は黒字を膨らませますが労働者への分配はありません。トリクルダウンは実現しませんでした。さらに財政赤字は増大する一方です。社会的には様々な格差、思想的分断が生まれました。
菅義偉は就任会見で「自助・共助・公助そして絆」をスローガンとして掲げました。安倍政権の継承です。映画では菅が権力を手にし、守ることができた要因は『金』であるとの証言を引き出しています。国民には「自分で何とかしろ」と言っておきながら、本人は公金を使い放題。官房機密費86億8千万、一日307万円の使途は一体何だったのか。まさに金権政治の権化みたいな人物です。
映画を観ていて、改めて政治の劣化を見せつけられ、途中で気分が悪くなってきました。そしてメディアの責任が大であることも再認識しました。このままでは大本営発表をそのまま報道していた戦時中のメディアと変わりません。そして国民もそれにつられて同じ過ちを繰り返しかねません。
なんとか今の安倍・菅政治の終焉を望みたいところですが、現在の総裁選の状況を見ているとそれも難しいようです。私自身、あと何年生きられるかわかりませんが、少しでも明るい未来を感じたいものです。完全なボヤキになってしまいました。失礼しました。
それでは今日はこの辺で。