今日の「この人の、この1枚」は、カルヴィン・リーヴィ(Calvin Leavy)の『Cummins Prison Farm』です。
1970年代になると日本でも黒人ブルースのリスナーが増えてきました。かく言う私もイギリスのブルース・ロックから黒人ブルースを聴くようになった一人です。
1973年頃、ブルースやソウル・ミュージックの評論家の日暮泰文氏が同じく評論家の鈴木啓志氏と隔月雑誌『ザ・ブルース』を創刊しました。この二人は当時の私の愛読雑誌『ニュー・ミュージック・マガジン』にも投稿していたのでよく読んでいました。その彼らが1975年頃にブルースやソウルの専門レーベル、『P ヴァイン・スペシャル(P-VINE SPECIAL)』を立ち上げました。今で言うインディーズ・レーベルの草分けでしょう。そのレーベルの第1回の発売がカルヴィン・リーヴィだったよう記憶していますが、誤っていたらご容赦願います。
カルヴィン・リーヴィは黒人のブルース・マンでしたが、その当時日本ではほとんど無名だったと思います。私も知りませんでした。アメリカでは南部を中心にシングル「Cummins Prison Farm」がヒットしてそこそこ知られていました。日暮氏はそんな彼を日本に紹介しようと思ったのですが、カルヴィンはまだアルバムをだしていませんでした。数枚のシングルだけだでした。アメリカではそれが当たり前ですが、日本ではシングルは歌謡曲やヒットチャートものに限られていました。洋楽のアーティストはLP中心でした。そのため日暮氏は何とかLPにしようと思いシングル盤を集め編集盤を製作したのです。世界で初めてのカルヴィンのLPだったのではないでしょうか。
カルヴィンのヒット曲「Cummins Prison Farm」は1968年に起きた、白人によって虐殺された黒人受刑者の事件を痛烈に批判した曲です。その事件というのはアーカンソーのカミンズ刑務所で3つの白骨死体が発見されました。一体は頭部がなく、もう一体は足が砕かれており、さらにもう一体は頭蓋骨がつぶされていました。それは黒人の受刑者たちでした。さらに調べると多くの黒人受刑者が埋まっているとのこと。彼らは白人によって虐殺され埋められていたのでした。この事件は新たに赴任した刑務所長によって明らかにされたのです。今また人種差別問題が深刻さを増していますが、この当時もこの事件で大きく取り上げられていたのです。この事件からでもすでに50年以上経っているのです。何度も何度も繰り返されるのです。
そして事件発覚の翌年、1969年にこの事件を歌にしたのが当時全く無名だった20代の若いブルースマン、カルヴィン・リーヴィだったのです。1976年、日暮氏らの努力によって日本でもこの曲が日の目を見ることになりました。
A1. Cummins Prison Farm
Bass – Hosea Leavy
Drums – Maurice HaygoodLead
Guitar – Robert Tanner
Vocals, Guitar – Calvin Leavy
A2. Big Four
Drums – Pat Brown
Guitar – Leroy Campbell
Harmonica – Cyrus Hayes
Vocals, Bass – Calvin Leavy
A3. Is It Worth All
Bass – Hosea Leavy
Drums – Pat Brown
Guitar – Leroy Campbell
Organ – Paul Brown
Vocals, Guitar – Calvin Leavy
A4. What Kind Of Love
Bass – Hosea Leavy
Drums – Pat Brown
Tenor Saxophone – Arister Akerson
Vocals, Guitar – Calvin Leavy
A5. Nine Pound Steel
Bass – Hosea Leavy
Drums – Pat Brown
Guitar – Leroy Campbell
Organ – Paul Brown )
Vocals, Guitar – Calvin Leavy
B1. Heart Trouble
Backing Band – Harry Dallas Band
Vocals, Guitar – Jesse "Guitar" Box
B2. It's Too Early In The Morning
Drums – Pat Brown
Guitar – Calvin Leavy, Leroy Campbell
Piano – Paul Brown
Vocals, Bass – Hosea Leavy
B3. I Met The Man From Cummins Prison
Bass – Hosea Leavy
Drums – Pat Brown
Guitar – Calvin Leavy
Harmonica – Willie Cobbs
Vocals – Marie Pryce
B4. You Can't Lose What You Ain't Never Had
Guitar – Calvin Leavy, Leroy Campbell
Organ, Drums – Pat Brown
Vocals, Bass – Hosea Leavy
B5. Born Unlucky
Bass – B.T.
Drums – Maurice Haygood
Vocals, Organ, Guitar – Calvin Leavy
タイトル曲のロバート・タンナーの闇を切り裂くようなギターを聴くと、これがブルースだ、と思わず声に出したくなります。
彼は後に薬物関連の罪で終身刑を受けカミンズ刑務所に収監され、2010年に70歳で亡くなりました。ブルースを地でいったような人生でした。
彼のアルバムはこれ1枚でした。
Calvin Leavy - Cummins Prison Farm 1969
Calvin Leavy Is It worth all that I'm going though.
Calvin Leavy ~ ''Born Unlucky'' 1969
それでは今日はこの辺で。