Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『赤い天使』を観る

先日のキネ旬シアターは『赤い天使』でした。

原作:有馬頼義

監督:増村保造

出演:若尾文子芦田伸介川津祐介

製作:1966年 日本

 

大映4K映画祭」の中の1本です。

 

私はこの映画もリアルタイムでは観ていませんが、ビデオで何度か観ていました。それでも映画館で上映すると知って大画面で観たくて足を運びました。忘れている部分も多かったので正解でした。

増村保造監督は好きな監督ですし、若尾文子の色っぽさも大好きでした。この二人のコンビは名作揃いです。溝口健二監督の遺作『赤線地帯』は傑作でした。

私の小学・中学生時代はもっぱら東宝と日活でした。東宝は怪獣映画とクレージーキャッツ、若大将など。日活は吉永小百合様らと石原裕ちゃんらの青春映画とアクション映画です。

大映はやや大人の雰囲気であまり通いませんでした。途中から怪獣映画『ガメラ』や『大魔神』をやりだしてから映画館へ足を運ぶようになりましたが、大映映画の良さがわかってきたのは大学生になってからのような気がします。

 

さて、この映画の監督・増村保造井上靖谷崎潤一郎大江健三郎開高健伊藤整三島由紀夫などいわゆる文芸作品を原作とする作品がほとんどでした。中でも谷崎潤一郎の作品は『卍』『刺青』『痴人の愛を手掛けました。

この『赤い天使』も直木賞作家の有馬頼義の作品です。彼はこの他に兵隊やくざも書いており、これも増村によって映画化されて大ヒットしました。主演はご存じ勝新太郎田村高廣でした。

 

『赤い天使』は若尾文子演ずる従軍看護婦の話です。彼女は天津の陸軍病院に赴任しましたが、傷病兵たちにレイプされてしまいます。その後の転属先の病院は最前線に近く傷病兵であふれかえっていました。そこらじゅうに手足や死体が転がっている始末です。軍医の岡部も精神的にまいってしまいモルヒネを打ちながらの診察・手術です。さくらは岡部に思いを寄せますが、岡部はモルヒネ中毒で不能になっていました。さくらはそれを治そうと一緒に寝るのですが岡部は諦めています。やがて岡部は最前線へと駆り出され、さくらも反対を押し切ってついて行くのです。

しかし、到着すると部隊ではコレラが発生、兵士たちは次々と戦線離脱。敵の攻撃が危ぶまれる中、岡部はモルヒネの禁断症状が現れ、さくらはそれを必死に食い止め、やがて岡部は正気に戻り、二人は激しく抱き合います。しかし、中国軍の総攻撃が始まり日本軍は全滅。さくらは奇跡的に助かりますが岡部は死体となって発見されるのです。なんとも救いのないドラマです。

 

この映画はエロティシズムを交えながらも痛烈な反戦映画になっています。狂気に満ちた傷病兵たち、その犠牲になる看護婦、精神を病む医師、人間扱いされない従軍慰安婦、殺戮が繰り広げられる戦場、おびただしい数の死。すべての元凶は戦争が巻き起こす狂気です。ロシアは一刻も早く戦争を止めるべきです。

 

手足を切断する手術シーンにはあまりにもリアルで思わず目を背けたくなります。まともな医療施設なら切断せずに済んだはずの傷病兵たちの怒りと悲しみと絶望。私の幼い頃も街で傷痍軍人たちが跪いて金銭を恵んでもらっていた姿を多く見かけました。あのような時代に戻らないことを切に願います。

 

若尾文子さんは色っぽさの絶頂期です。お美しい!

 

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それでは今日はこの辺で。