Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『枯れ葉』を観る

新春一発目のキネ旬シアターは『枯れ葉』でした。

 

監督・脚本:アキ・カウリスマキ

出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン

製作:2023年  フィンランド・ドイツ 同年  日本公開

 

フィンランドの監督アキ・カウリスマキの6年ぶりとなる新作です。一旦は引退宣言をした同監督ですが、ここに復帰しました。

 

舞台はヘルシンキ。中年の男女。理不尽な理由でスーパー・マーケットを解雇された女性アンサと酒に溺れながらも工場で働く男ホラッパは偶然カラオケバー知り合い、言葉を交わすこともないのにも関わらずお互いに惹かれ合います。

 

その後、偶然再会した二人はお茶を飲み、映画を観て次の再会を約束します。しかし、ホラッパは電話番号を書いた紙を失くしてしまいます。アンサは電話を待ち続けますが電話は鳴りません。ホラッパは毎日のように映画館の前で待ち続けます。そしてとうとう再会出来たのです。

アンサはホラッパを夕食に招待します。食事の最中、ホラッパは酒を我慢できず飲んでしまいます。アンサは「アル中はご免よ」と言うと、ホラッパは「指図されたくない」と言って出ていってしまいます。

その後、悶々とした日々を送っていたホラッパは断酒を決意し実行します。そしてアンサに電話して「酒をやめた。今から行っていいか?」と聞くと、アンサは「すぐ来て」と応えます。そしてホラッパはスーツに着替えてアンサの家に向かうのですが・・・。

 

社会の底辺に暮らす男女のよくあるラブストーリーですが、なぜか奇妙な感じを受けるのです。ラジオからはウクライナ戦争のニュースが盛んに流れます。しかしカラオケバーは二昔前の感じ。電話番号を教えるのに手書きのメモ。ガラケーだけでスマホもありません。時代背景はごく最近のはずなのになにやら懐かしさを感じさせます。

 

セリフは少なく、二人の表情も乏しい。ラブシーンも一切なし。それなのに二人の気持ちがひしひしと伝わってくるのです。この辺が監督の狙いなのでしょう。アンサが拾った野良犬がとても可愛くて、このラブストーリーに彩りを添えています。ラストシーンは圧巻です。

映画館のポスターにはかつての名画がたくさん貼られていました。ゴダールブレッソンの名前も飛び出します。おまけに犬の名前はチャップリンです。監督の映画愛が感じられます。音楽もまた素晴らしく、エンディングで流れる「枯葉」は心に響きました。

たった80分ですが極上のラブストーリーでした。

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それでは今日はこの辺で。