1985年にデビューし、80年代の終焉と共にあっという間に失速したホワイトライオン(White Lion)です。
ホワイト・ライオンはデンマーク生まれのマイク・トランプ(Mike Tramp,vo)とアメリカ人のビト・ブラッタ(Vito Bratta,g)の出会いによって始まります。
マイク・トランプはデンマークの地元で14歳の頃からヴォーカリストとして活動していました。『MABEL』というバンドでは6枚ものアルバムを発表、うち2枚がゴールドディスクを獲得するなどかなりな人気を誇っていました。しかし次第にポップ色の強い音楽に飽き足らず、アメリカに活動の場を移そうとしましたが、結局何も得られず帰国、解散となりました。
しかし、マイクは諦めきれず再び渡米、自身のバンドを組みクラブで活動し始めました。そこで同じクラブにいたビト・ブラッタに出会ったのです。2人は意気投合し、フェリックス・ロビンソン(Felix Robinson,b)とニッキー・カボッツィ(ds)(セッションメンバー)でホワイト・ライオンをスタートさせました。
地元で人気が出てくるとエレクトラとの契約が成立します。そしてファーストアルバムのレコーディングが行われましたが、レコード会社のゴタゴタでなかなか発売されません。そこで日本のビクターが世界に先立って先行発売します。1985年12月のことでした。アルバム『Fight to Survive』です。
ところがこれが、イギリスで評判を呼びます。日本からの輸入盤が飛ぶように売れ、イギリスでの輸入盤チャートの1位を獲得するまでになりました。そしてとうとうアメリカでも発売ということになりました。ホワイト・ライオンの音楽性はマイケル・トランプがデンマーク出身ということも影響しているのか、哀愁のあるメロディーが多いのです。アメリカナイズされたロックよりもこの手のちょっと哀愁を帯びたロックがイギリスで受けるのはよくあることです。地元アメリカでよりもヨーロッパや日本で成功したバンドはたくさんあります。
ファーストアルバムが完成したころにはフェリックスがバンドを去ります。代わりにジェイムズ・ロメンゾ(James LoMenzo,b)が加わり、ドラムの方はアンスラックスにいたこともあるグレッグ・デアンジェロ(Greg d'Angero,ds)が加わりました。
こうしてようやく1987年にセカンドアルバム『Pride』がリリースされることになりました。
01.Hungry
02.Lonely Nights
03.Don't Give Up
04.Sweet Little Loving
05.Lady of the Valley
06.Wait
07.All You Need Is Rock 'n' Roll
08.Tell Me
09.All Join Our Hands
10.When the Children Cry
プロデュースはあのマイケル・ワグナー(Michael Wagener)です。
このアルバムが大変な売れ行きを示します。シングル3曲「Wait」「Tell Me」「When the Children Cry」がチャート入り、しかも2曲は3位と8位でした。アルバムは全米チャート11位でダブルプラチナです。
今聴き直してみると、まさに80年代のヘヴィメタそのもので懐かしいです。 これは日本で売れないわけはない、メロハーです。マイケル・トランプのハスキーヴォイスは好き嫌いがあるかもしれません。アメリカでのダブルプラチナはちょっと意外でしたが、ボン・ジョヴィなどを考えるとさもありなんです。出来ればリマスター盤が欲しかった。
勢いに乗って2年後の1989年にサードアルバム『Big Game』をリリースします。
前作が素晴らしすぎて陰に隠れがちですが、これも名盤の部類に入ります。アルバムチャートは19位、シングルも2曲が59位と健闘します。
前作に引き続きメロディアスで泣きのバラードもあり、ヴィトのギターが一段と冴えわたります。
そして2年後の1991年、4作目『Mane Attraction』をリリースします。
プロデューサーがマイケル・ワグナーからチープトリックやバッド・イングリッシュを手掛けたリッチー・ジト(Richie Zito)に代わります。
基本は前作までと変わりません。バラード曲は増えましたが。
アルバムチャートは61位になりますが、シングルヒットはありませんでした。これはおそらく彼らの音楽性が変わったのではなく、周りが変わったのでしょう。
90年代に入ると、ヘヴィメタは失速し、オルタナティヴ・ロックが主流を占めるようになりました。さらにグランジ・ブームへと変わっていきます。
ホワイト・ライオンはこの後解散します。
ジェイムズ・ロメンゾはザック・ワイルドのもとへ行き、プライド&グローリー~ブラック・レーベル・ソサイアティで活躍します。その後はメガデスやリンチ・モブのメンバーになります。
ビト・ブラッタは消息不明です。
マイケル・トランプはソロで活動し9枚のアルバムを発表しています。
ホワイト・ライオンは80年代に一瞬華々しく輝きましたが、時代の波に飲み込まれそのままあっという間に消えてしまいました。
特にこのころ、変化のスピードが上がってきた時代でした。アーティストは常に時代の波の翻弄されるのでしょう。
ビデオを見ると古臭ささ満載です。
White Lion - When The Children Cry [HD]
それでは今日はこの辺で。