Flying Skynyrdのブログ

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映画『アガサ・クリスティー ねじれた家』を観る

今日のキネ旬シアターはアガサ・クリスティー ねじれた家』でした。

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原作:アガサ・クリスティ

監督:ジル・パケ=ブレネール

主演:グレン・クローズ、マックス・アイアンズ

制作:2017年 イギリス 日本公開 2019年

 

アガサ・クリスティの数多くの作品の中から、今回は『ねじれた家』が映画化されました。私もクリスティは好きで、結構な数を読んでいましたが、残念ながらこの作品は読んでいませんでした。たとえ読んでいたとしても多分忘却の彼方だったでしょうが。この作品はクリスティも自身の最高傑作だと認めているようです。そんな作品を何故読まなかったのでしょう。不思議です。

クリスティの作品は随分映画化されていますが、実際に観たのは『オリエント急行殺人事件』と『そして誰もいなくなった』ぐらいだったのではないでしょうか。意外と観ていませんでした。

ということで今回は久しぶりのクリスティとの対面でした。エルキュール・ポアロは登場しません。

 

推理小説なのでさすがにネタバレは止めておきます。

 

ざっくりとあらすじだけ。

ギリシャで生まれて、無一文でイギリスに渡り、レストラン経営で巨万の富を築いたアリスティド・レオニデスが突然亡くなりました。孫娘のソフィアはかつての恋人で私立探偵のチャールズを訪ね、祖父は誰かに殺されたに違いないと捜査を依頼します。

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一旦は断りますが、チャールズは警察を訪ね、タヴァナー主任警部からレオニデスは毒殺だったことを知らされます。タヴァナーからマスコミが騒ぎ出す前に真相を探るよう依頼され、チャールズはレオニデスの大邸宅に向かいます。

さっそく一族に聞き込みを開始しますが、絶対権力を誇っていたレオニデスに抑圧された一族の人々はそれぞれが「ねじれた」心の持ち主で一筋縄ではいかない人間ばかりで、捜査は進みません。

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前妻の姉・大伯母のイーデスが家を取り仕切っています。彼女への聞き取りから始めますが、上手くいきません。その他、レオニデスの若き後妻ブレンダ。彼女には家庭教師である愛人ローレンスがいます。彼はレオニダスの回想録を管理しています。映画製作で資金が欲しい長男フィリップと売れないダンサーの妻マグダ。父から受け継いだ会社が倒産寸前の次男ロジャーと毒の専門家である妻のクレメンシー。さらに、フィリップの長男で反権力主義で引きこもりのユースタス、探偵小説愛読者の末娘ジョセフィンと乳母のナニー。そして第1発見者であるフィリップの長女ソフィア。全員にレオニダス殺害の動機があることが分かりました。

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チャールズは顧問弁護士を訪ね、遺書の存在を知りますが、その遺書は法的に無効で、このままいけば遺産の大半は後妻のブレンダが相続することになる、ということを聞かされます。やがて、事件は明るみになり、正式な遺言状を預かっているという男が現れました。その内容は遺産のほんの一部をブレンダに残し、その他はソフィアに相続するというものでした。ソフィアはそのことを知っていたというのです。

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そしてある事件が発生します。ジョセフィンが屋敷内のツリーハウスから転落したのです。縄梯子に切れ目が入っていたのです。それは故意につけられたものでした。殺人未遂事件として捜査を開始し、使用されたとする剪定ばさみがローレンスの部屋から発見されました。さらにブレンダとローレンスとの間のラブレターも発見されました。このことによって、レオニダスを殺害したのはこの二人で、ラブレターの発覚を恐れてジョセフィンまで殺害しようとしたとして二人は逮捕されました。これでレオニダス殺害事件は一件落着となったはずでした。しかし、チャールズは疑惑を捨てきれませんでした。

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そして第2の殺人事件が発生しました。この後意外な展開と悲しい結末が待ち受けていました。

 

アクロイド殺し」や「オリエント急行」のように、いかにもクリスティらしい意外な結末というところでしょうか。原作を読んでいないのでわかりませんが、おそらくもっともっとミステリアスな内容で最後まで犯人が分からないような小説なのではないかなと想像してしまいます。そうでなければ、クリスティ自身が最高傑作だなどと言うはずがありません。

 

この映画は推理という面では全く物足りないような気がします。探偵のチャールズも謎解きをしているわけではありません。ただ登場人物にインタビューしているだけと言った方がいいかもしれません。むしろそうした謎解きが映画の主題ではないのかもしれません。それぞれに動機はありますが、さほど強い動機ではありません。アリスティド・レオニデスという大富豪がどのようにして富を築いたのか。そこにはCIAの協力者としての顔があり、さらにそれがチャールズとソフィアの関係にも影を落としているという話がそれとなく挿入されてきます。しかしそれらも殺人とは無関係です。

 

映画では犯人が判ってからの最後の10分間にすべてが凝縮されています。その10分間のサスペンスのような結末にたどり着くまでの伏線として1時間50分の人間ドラマがあったのです。

 

こうしてみると、やはり良質な推理小説を映画化するのはなかなか難しいものがあります。どうしても原作と比較してしまうので、映画の脚本をどれだけ工夫するかがカギとなります。今回は原作を読んでいなかったので、最後まで興味深く観れましたが、原作を読んでいたら、もしかしてがっかりしていたかもしれません。それだけ推理小説の映画化は難しいのです。

 

イーディス役を演じた主演のグレン・クローズは先日観た『天才作家の妻 40年目の真実』で主演した女優です。

また、 タヴァナー主任警部を演じたのはあの『コレクター』テレンプ・スタンプでした。あまりにも変わっていてしばらくわかりませんでした。

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「アガサ・クリスティー ねじれた家」予告編

 

それでは今日はこの辺で。