今日の「聴き比べ」は佐良直美が歌った『いいじゃないの幸せならば』です。
１９６９年の日本レコード大賞受賞曲です。この年は森進一の『港町ブルース』が下馬評では圧倒していましたが、この曲が受賞して意外な感じを受けました。というのも、この曲が売れ出してからそれほど時間が経っていなかったような気がしたからです。発売が７月ということでそれほど世間に浸透しているとも思えませんでした。
この曲はいずみたくと岩谷時子のコンビですが、当時の社会風潮を象徴したような歌詞になっています。若者世代の退廃的ムードいっぱいの歌詞と曲調です。７０年安保を前にした学生たちの熱気と、その裏腹にある行き詰まり感、絶望感が入り混じった時代でした。そんな時代がこの歌を受け入れたのでしょう。
ちなみに、この年は東大安田講堂の攻防戦、東大入試が中止、また東京教育大学（現筑波大学）も移転反対闘争で入試中止、そして三島由紀夫が東大の駒場キャンパスで全共闘と公開討論をしています。また、連続射殺魔、永山則夫が逮捕されています。そして翌年は赤軍派による「よど号」ハイジャック事件、三島由紀夫の割腹自殺などがありました。
ＣＭでは「オー、モーレツ!」が流行り、モーレツ社員を絶賛していました。今は「働き方改革」、隔世の感がありますね。
作詞：岩谷時子
作曲：いずみたく
あのとき あなたとくちづけをして
あのとき あの子と別れた私
つめたい女だと 人は云うけれど
いいじゃないの 幸せならば
あの晩 あの子の顔も忘れて
あの晩 あなたに抱かれた私
わるい女だと 人は云うけれど
いいじゃないの 今が良けりゃ
あの朝 あなたは煙草をくわえ
あの朝 ひとりで夢みた私
浮気な女だと 人は云うけれど
いいじゃないの 楽しければ
あしたは あなたに心を残し
あしたは あなたと別れる私
つめたい女だと 人は云うけれど
いいじゃないの 幸せならば
この曲を夏木マリがカバーしました。ますます退廃的です。
さらにちあきなおみもカバーしました。
森昌子も歌っています。
それでは今日はこの辺で。
