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映画『海辺の彼女たち』を観る ~ キネ旬シアター

先日のキネ旬シアターは『海辺の彼女たち』でした。

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監督:藤元明緒

出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニュー

製作:2020年 日本・ベトナム   2021年 日本公開

 

ネタバレです。 

ベトナムからやってきた3人の女性、アン、ニュー、フォン。彼女たちは技能実習生でした。

ある職場で3カ月間働きますが、過酷な労働から逃れるために脱走しました。パスポートも在留カードも取り上げられたままでした。

 

ベトナム人の斡旋ブローカーから仕事を紹介してもらい雪深い港町にやってきました。

ブローカーは送金用のキャッシュカードを渡し、斡旋料を受け取り、さらに毎月の給料の中から斡旋手数料をもらうとの約束をします。

 

連れていかれた職場は漁場での肉体労働です。3人は不法就労という立場になりましたが、故郷に仕送りするために懸命に働きます。そんな中、フォンが体調を崩し倒れてしまいます。

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アンとニューは彼女を心配して病院に連れていきます。しかし、在留カードが無いと診察できないと言われてしまいます。フォンは二人に体調不良の原因はどうやら妊娠したと報告するのです。その相手とは何度電話しても連絡が付かないのです。

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フォンは職場のベトナム人在留カードを偽造してくれる人を紹介されます。手数料は5万円です。家への仕送り止めて偽造を依頼します。偽造カードを作ったことを知ったアンとニューの態度が冷たくなりました。なぜならバレたら彼女たちの身分も危うくなるからです。

 

フォンは病院へ行き、診察を受けます。胎児は元気で順調でした。しかし出産費用が10万円かかります。寮に戻るとブローカーが待っていました。そしてブローカーから妊娠中絶薬を渡されます。寮に戻ると二人の態度は冷たいままです。彼女は粗末な食事をし、妊娠中絶薬を飲んで静かに横たわるのでした。

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全編ドキュメンタリー・タッチの画面がベトナム人技能実習生の彼女たちの切実な現実と切なさが伝わってきます。明るい希望など全く見えない、真っ暗な映画でした。

 

日本のこれまでの繁栄を底辺で支えたのは中国人をはじめとした技能実習生の力によるところが大だったと思います。しかしその実態は技能実習とは名ばかりで、奴隷のような労働を強いてきたのです。

 

希望に満ちて祖国を離れ、送り出してくれた家族に感謝し、少しでも多くの仕送りをしたいと懸命に働く実習生。雇い主は過酷な労働を命じ、罵倒し、搾取します。このような現実のもと多かれ少なかれ日本の農業・漁業・製造業は成り立っているのです。

 

残念なことに、この映画の監督のことは全く知らなかったので、どのような趣旨でこの映画を製作したのかは不明ですが、もう少し労働の実態や実習生の生活を映して欲しかったです。

 

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それでは今日はこの辺で。