Flying Skynyrdのブログ

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映画『せかいのおきく』を観る

先日のキネ旬シアターは『せかいのおきく』でした。

 

監督・脚本:阪本順治

出演:黒木華寛一郎池松壮亮佐藤浩市真木蔵人

製作:2023年  日本

 

江戸の末期、武家育ちながらも貧乏長屋で暮らすおきくは父親との二人暮らし。そこに紙屑拾いの中次、糞尿買いの矢亮の二人が絡む青春ドラマです。モノクロ・パートカラー。

 

安政時代、矢亮は江戸中の糞尿を買い集め、農家に売って生計を立てています。紙屑を拾ってそれを売って生計を立てている中次。矢亮は中次を糞尿買いに誘い、一緒に働くようになります。中次とおきくは顔見知りで、おきくは密かに思いを寄せていました。中次のほうは身分が違うと諦めていました。

おきくの父親は武士の身分をはく奪され、長屋暮らし。ある日、武士3人に呼び出され殺されてしまいます。おきくも巻き込まれ喉を切られ声を失ってしまいます。おきくはショックで引きこもってしまいます。それを見たお寺の和尚が子供たちを連れてやってきます。そして子供たちに言葉の意味を教えてやってくれ、それがおきくさんの役割だと諭します。おきくは少しづつ心を開いていくのです。そんなおきくを中次はそっと見守っています。そんなある日、おきくは思わぬ行動に出るのです・・・。

この映画は目を背けたくなるような「糞まみれ」の映画です。映画の半分は糞尿の汲み取りシーンと糞尿まみれのシーンが続きます。見た目も音も本物そっくりです。臭いまでもが漂って来るようです。実はこれは江戸時代の循環型社会を描いているのです。人間の糞尿を汲み取って畑の肥やしにする。出来上がった野菜を食べて、糞をする。そしてそれがまた肥料になる。紙くずも拾っては再生紙として再利用する。実に現代が求めている循環型社会がここにあったのです。

 

私の幼い頃にも「汲み取り屋」なる人が廻って来ました。リヤカーで桶をいっぱい積んで運んでいました。それが畑の肥料になっていたのです。そのうちに「汲み取り屋」はいなくなり、バキュームカーになり、やがて下水処理になったのです。そして時代は再び「循環型社会」を求めるようになりました。この映画は貧しかった江戸時代末期を描くことによって現代社会へのアンチテーゼになっていると受け止めましょうか。

 

ちなみに父親が殺されたのは安政の大獄の一環だったのではないかと勝手に想像しています。

中次役の寛一郎佐藤浩市の息子だそうです。目つきがそっくりです。

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それでは今日はこの辺で。