以前、若干ですが記事で触れた『サウザー・ヒルマン・ヒューレイ・バンド』のアルバムを取り上げてみます。
『サウザー・ヒルマン・ヒューレイ・バンド(SHF)』は1973年、アサイラム・レコードのデヴィッド・ゲフィンが勢力を傾けて結成したロスアンぜルスのスーパーグループです。
ジョン・デヴィッド・サウザー(John Dvid Souther)はジャクソン・ブラウンやイーグルスのグレン・フレイなどと親交が深く、リンダ・ロンシュタットのプロデュースなども手掛けた、後にはジャクソン・ブラウンに肩を並べるほどの大物になったシンガー・ソング・ライターです。
クリス・ヒルマン(Chris Hillman)はザ・バーズのオリジナルメンバーで脱退後はフライング・バッリト・ブラザース(FBB)、スティヴン・スティルスのマナサスに在席していました。
リッチー・ヒューレイ(Richie Furay)はバッファロー・スプリングフィールドの創設メンバーで、後にバッファローのメンバーだったジム・メッシーナとポコを結成しました。
この顔ぶれを見ただけで、いわゆるウェストコーストの、中でもロスアンゼルス・ミュージックの本道をゆくメンバーであることがわかります。
バンドの正式メンバーは
ジョン・デヴィッド・サウザー(John Dvid Souther,g,vo)
クリス・ヒルマン(Chris Hillman,b,g,mandolin,vo)
リッチー・ヒューレイ(Richie Furayg,vo)
ポール・ハリス(Paul Harris,key)
アル・パーキンス(Al Perkins steel g,g,b,dobro)
ジム・ゴードン(Jim Gordon,ds,per)
ジョー・ララ(Joe Lala,per)(2曲のみ参加)
です。
プロデュースはリチャード・ボードラ―です。スリー・ドッグ・ナイトやステッペン・ウルフを手がけた人です。
メンバーを見ただけで意気込みが伝わってきます。ジム・ゴードンを除きマナサスのメンバーです。ウェストコーストでは有名な連中です。ジム・ゴードンはトラフィックやデレク&ザ・ドミノスに在席していたのことで、これまた有名なドラマーです。
1974年にファーストアルバム『The Souther-Hillman-Furay Band』がリリースされます。
アルバム構成は、J.D.サウザーが4曲、クリス・ヒルマンとリッチー・ヒューレイが3曲づつとほぼ公平に割り振られています。それでも実権はJ.D.サウザーが握っていたようです。クリス・ヒルマンの曲はカントリーロック系です。リッチーはポコ時代のポップな曲、そしてJ.DサウザーはSSWらしい曲で、特にラストの「Deep,Dark And Dreamless」はドラマティックな曲でこのアルバムの目玉ではないでしょうか。バックのメンバーからして演奏力は申し分なく、ウェストコーストにしてはずっしりと重いリズムセクションと抜群のハーモニーが心地よい良質なアルバムが出来上がりました。
翌年、セカンドアルバム『Trouble in Paradise』がリリースされます。
このアルバムでは、ドラムスのジム・ゴードンが抜け、代わりにロン・グリネル(Ron Grinel)がジョー・ララとともに参加しています。J.D.サウザーが2曲でドラムスを担当、ベースで1曲担当と大活躍です。プロデューサーもトム・ダウドに替わりました。
アルバム構成は全9曲中、J.D.サウザーが4曲、クリス・ヒルマンが3曲、リッチー・ヒューレイが2曲となっています。リッチーの曲が2曲というのもちょっと寂しいです。
アルバム1曲目の「Trouble in Paradise」は後に本人がソロアルバムでも取り上げています。また、「Prisoner In Disguise」はリンダ・ロンシュタットが同名のアルバムを出してカバーしています。
アルバム全体は前作の延長線ですが、どうしてもこのようなスーパーグループとなると、過去の例にもあるように、グループを共通の音楽の元に維持していくということに無理が生じてくるのでしょう。この3人に不協和音が出てきたという訳ではなく、じゃあ次何をやる、となると行き詰ってしまうのではないでしょうか。ラストの曲「Somebody Must Be Wrong」は意味深です。
私の予想通り、このアルバムがラストアルバムになってしまいました。
その後は3人ともソロアルバムの制作に入ります。
J.D.サウザーはファーストソロ『John Dvid Souther』で傑作を生みだします。
ソロ3作目には大ヒットアルバム『You're Only Lonely』を出します。
クリス・ヒルマンもソロアルバムを数多く出します。特にファーストソロ『Slippin' Away』ではFBB時代のグラム・パーソンズとの共作「Down in the Churchyard 」を取り上げたりして、カントリーロックを踏襲しています。セカンドは『Clear Sailin'』でした。
リッチー・ヒューレイもいまだに頑張っています。ファーストの『I've Got a Reason』は傑作です。セカンドは『Dance a Little Light』です。
彼らの個別のソロアルバムについては、いずれまた改めて書きたいと思っています。
彼らの解散の後、ウェストコースト、特にロサンゼルス系は下り坂に入っていきます。イーグルスもピークを迎え、その後は解散へと向かいます。
この後、ファイアーファール、フールズ・ゴールド、ファンキー・キングス等々数多くのバンドが結成されては、解散へと。そしてやがてウェストコーストはL.Aメタルへと向かいます。
Deep Dark and Dreamless - Souther Hillman and Furay Band
Souther-Hillman-Furay Trouble in Paradise
The Souther Hillman Furay Band -Prisoner In Disguise
それでは今日はこの辺で。