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映画『ベロニカとの記憶』を観る

今日のキネ旬シアターはベロニカとの記憶でした。

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監督:リテーシュ・バトラ

主演:ジム・ブロードベントシャーロット・ランプリング

制作:アメリカ、イギリス 2018年公開(日本)

 

人間の記憶とはなんといい加減で、都合よく塗り替えられてしまうのかということを思い知らされる映画でした。

 

60歳を過ぎ、小さなカメラの修理店の経営と年金で生計を立てているトニー・ウェブスターの元に、学生時代の初恋の人ベロニカの母親セーラが亡くなり、その遺品をトニーに渡してくれとの遺言があると弁護士からの手紙が届きます。

トニーは40年以上も前に別れた女性の母親から遺言があるなど不思議に思い弁護士を訪ねます。遺品は日記だが、しかし手元に日記は無いという。娘のベロニカが持っていると言います。トニーはベロニカに会わせて欲しいと依頼します。

このあたりからトニーの過去の回想が始まります。

学生の頃、あるパーティーでトニーはちょっと変わった女子学生ベロニカと知り合い、付き合うようになりました。家にも招待され、家族とも夕食を共にします。翌朝は母親のセーラと二人きりになり、母親の誘うような態度にドギマギします。その後も付合いは続きますがなかなか進展しません。

 

そうこうしているうちに、トニーの親友である転校生のエイドリアンから「ベロニカと付き合うことになった」との手紙が届きました。怒り狂ったトニーはエイドリアンに対しベロニカのいかれ娘ぶりとその母親の淫乱ぶり、そしてエイドリアンに対する罵詈雑言を手紙を書いて送りました(これは後から思い出していきます)。その数年後トニーはエイドリアンが自殺したことを聞かされました。

 

この過去の記憶をトニーは別れた妻マーガレットに聞かせます。トニーは話しながら過去の記憶を呼び戻していきます。しかしマーガレットはそんな話は聴きたくないと逃げてしまいます。2人には36歳になる娘がいます。この娘は臨月でシングルマザーになる予定です。トニーはこの娘からも偏屈な性格を疎んじられています。

 

弁護士の計らいによってベロニカとの再会が実現しました。ベロニカは日記はエイドリアンが書いたものだ、残しておいても誰も幸せになれないから燃やしたと言います。トニーは自分には日記を読む権利があると主張しますが、ベロニカは封書を置いて立ち去ってしまいます。トニーはベロニカの後をつけ住まいを確かめます。

 

渡された封書は、トニーがエイドリアンに当てた手紙でした。トニーはそれを読んで愕然としました。自分がこんなひどい手紙を書いていたことを忘れていたのです。自分は祝福の手紙を書いたつもりでいました。トニーはマーガレットにもその手紙を見せました。マーガレットはあきれて口もきけませんでした。

 

トニーはベロニカに謝ろうと駅の前で待ち伏せします。するとベロニカは何人かの集団の中の男性と手をつなぎながら歩いてきました。そして家の前でベロニカに話がしたいと声をかけますが、そのうちにとその日は断られます。

 

別な日、同じ駅で待っていると先日の集団を見かけ、後をつけるとパブに入っていき、中で様子を伺っていると、ベロニカと手をつないでいた男性がエイドリアンと呼ばれているのが聞こえました。トニーはすぐにベロニカとエイドリアンの息子だと思いました。

 

それから再びパブを訪ねると、またあの集団がやって来て、なにやらこちらを見て話しをしている様子。中の一人の男性が近づいてきて我々に何か用ですかと、尋ねられます。トニーは正直に私はベロニカとエイドリアンの昔の有人で、2人の息子の顔が見たかっただけだと答えます。男性はその話はおかしい。エイドリアンはベロニカの弟だと聞かされます。その男性は障害者施設の職員だったのです。エイドリアンは知的障碍者のようです。

 

そこでトニーは自分の勘違いに気が付いたのです。エイドリアンはベロニカの母親との間に子供を作ってしまい、悩んで自殺したのです。ようやくトニーはベロニカが大変な人生を歩んできたことに気が付くのです。

 

マーガレットの代わりに産気づいた娘の出産に立ち会い、妻のマーガレットにこれまでの自分の行いを謝りました。そしてベロニカにも謝罪の手紙を書きました。

 

トニーに対する妻の態度や娘の表情から、離婚の原因はおそらくトニーの性格や行いにあったのだろうということは容易に想像がつきます。郵便配達員に対する態度やレストランで子供を怒鳴りつける行動にそれが現れています。

そういった性格や行動が人を傷つけてきたことを、過去の出来事を思い出すことによって反省し、妻も娘もベロニカも許してくれるという結末ですが、そう簡単にはいかないのが現実でしょう。

 

確かに思い出したくない過去はたくさんあります。そしていつの間にか記憶を自分の都合のいいように書き換えてしまうこともあるのでしょう。しかしそれを確かめる術は年をとればとるほど無くなっていきます。回りにそれを知っている人間がいなくなっていきますから。

 

それでもどうにも消せない過去は残ります。人間50年も60年も生きていれば誰しも人に言えない過去を持っているものです。こんな私でもいまだに身震いするような過去が蘇ることがいくつもあります。結局、誰にも言えずに自分の中にしまい込んであの世へ行くしかないのでしょうね。

そういうことを考えさせられる映画でした。

 


映画『ベロニカとの記憶』予告編

 

それでは今日はこの辺で。