Flying Skynyrdのブログ

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映画『ルイの9番目の人生』を観る

昨日のキネ旬シアターはルイの9番目の人生でした。

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監督:アレクサンドル・アジャ

主演:ジェイミー・ドーナンサラ・ガドン、アーロン・ポール、エイダン・ロング    ワース

制作:2016年 カナダ、イギリス、アメリカ(2018年公開 日本)

 

同名小説の映画化です。ちょっとゾッとさせられる映画でした。ミステリーなのか、スリラーなのか、オカルトなのか、はたまた社会派ドラマなのか、ジャンル分けが難しい作品でした。

 

ストーリーは難産で帝王切開の末生まれてきたルイ。現在9歳。これまでに出産時を含め8回死にかけました。小さな事故まで含めると数え切れません。

 

9歳の誕生日に両親とピクニックに出かけ、崖から転落し、意識不明の状態で病院に運ばれ、間もなく息を引き取ります。そして解剖に回され、2時間ほどして解剖に取り掛かろうとすると、いきなり息を吹き返しました。そして昏睡状態に入ります。

 

警察は母親ナタリーの証言でルイを崖から突き落としたのは父親のピーターだとし、行方を追いますが、見つかりません。ナタリーとポールは不仲で別居状態でした。しかもポールはルイの実の父親ではありませんでした。

 

昏睡病棟で担当するのはパスカル医師です。パスカルは気落ちするナタリーに崖から転落したときの様子や、ルイのことなどを聴いていくうちに次第に彼女に同情するようになり、恋愛感情にまで発展するようになりました。

 

ある日ナタリーの元に手紙が届きます。そこにはパスカルとの付合いには気をつけろと書いてありました。差出人はルイとなっていました。警察はピーターがわざと筆跡を隠すために左手で書いたのだろうと考え、ピーターの行方を追います。

 

しかし、ピーターの死体が発見されます。それはルイが転落した海岸のそばの洞窟の中でした。手紙の犯人はピーターではなかったのです。

 

パスカルはかつてルイのセラピーをしていた精神科医ペレーズに会いに行きます。そこでルイがペレーズを激しく詰った手紙を見せられます。そしてその文面が今回の手紙に酷似していることに気が付きます。

 

ある日、病棟でパスカルが居眠りをしているときに夢遊病のような行動をとったことを看護師から告げられます。監視カメラでその時の様子を確認すると、パスカルは左手で処方箋を書いていました。それはナタリーを毒殺するための処方箋だったのです。警察に筆跡鑑定を依頼すると、間違いなく以前の手紙と同様パスカルが書いたものでした。

 

パスカルは自分がルイによって操作されているのではとペレーズに相談します。ペレーズ催眠療法パスカルとルイの心を接触させることに成功しました。そしてパスカルの口からルイのこれまでのことが語られ始めました。この辺はオカルトチックです。

 

このあと、ルイが死にかけた9度の事故の謎が次々に明らかになっていきます。すべての元凶は母親ナタリーだったのです。今回の事件もナタリーがルイに食べさせる飴に毒を仕込んでいました。ピーターが自分にもくれと言いますが、ナタリーは拒否します。不審に思ったピーターはその飴を奪おうと揉み合いになり、ピーターは崖から転落してしまったのです。

 

ナタリーは「代理ミュンヒハウゼン症候群」という精神疾患を患っていたのです。この病気は普段では全く分かりませんが、泣いて人の同情を買いたいという病気です。つまり、我が子を危険な目に遭わせて、人の同情を買うという行動を繰り返します。我が子はかわいいが邪魔になることもあるというのです。

 

最初に事故が起きた時に、ナタリーは知り合いだったピーターに泣きつきます。ピーターはこれに引っ掛かって、ナタリーに同情し、離婚までしてナタリーと結婚しルイの父親になりました。そしてパスカルも彼女に同情して深い関係に陥ってしまったのです。そしてパスカルの夫婦関係は気まずくなります。

ピーターの母親はそんなナタリーの性格を見抜いていたため、嫁とは犬猿の仲でした。しかし血は繋がっていなくてもピーターがルイをこよなく愛していたことを知っていたので、ルイを殺すなんてありえないと初めから主張していました。

 

ルイはそんな母親でもやはり好きでした。そしてどうして自分がこんな目に合うのかもわかっていました。それでも自分さえ我慢していれば、母親に嫌われずにいられると思ったのでしょう。そのためこれまでは全てを受け入れてきましたが、今回は大好きな父親まで殺されてしまったため、パスカルを使って意思表示をしたのではないかと思われます。

 

真相が明らかになり、ナタリーは病院に収容されます。そしてそのお腹にはパスカルの子が宿っていました。最後にルイが目を覚まして映画は終わります。

 

この母親の心理にはゾッとさせられました。こんな名前の病気があることも知りませんでしたが、人の同情を買うことを得意としている人はよく見かけます。私の周りにもそのような人はいました。しかし、我が子の命と引き換えにするところまで行くと、さすがに病気なのでしょう。悲劇の主人公でなければ気が済まないのです。美人で不幸を背負ったような女にピーターもパスカルも騙されてしまいます。

 

ピーターがナタリーと別居することになった時にルイは「行かないで」と泣きますが、ピーターは「大丈夫、お前は世界で一番強い子だ。パパはいつでもお前の心の中にいるから」と言います。また「泣いている人と、笑っている人がいたら、自分は泣いている人の役に立ちたい」というようなことを言います。ピーターの父親としての愛情だけが救いとなった映画でした。

 

男はいつでも弱い女には弱いのです。

 


映画『ルイの9番目の人生』予告編

 

こちらは原作です。

 

それでは今日はこの辺で。