小・中学時代、特に「歴史」という教科に興味のある少年ではありませんでした。もっとも小・中学時代は「社会」という教科の中の歴史でしたが。
小学時代にも家族が観ている歴史物のドラマなどは観ていましたが、特別面白くて見ていたわけでもなく、なんとなく観ていたという感じでしたでしょうか。
それが中学生時代の1968年のNHKの「大河ドラマ」の『竜馬がゆく』を1年間通して観て、その意識がガラリと変わりました。特に「幕末」という時代に大いなる興味を抱いたのです。その前年も確か『三姉妹』という幕末ものでしたが、こちらにはさほどの興味はありませんでした。坂本龍馬も西郷隆盛も出ていたと思うのですが、ほとんど記憶がありません。山崎努と岡田茉莉子が出ていたのは憶えています。
何故興味を持ったのでしょう。今考えると、時代を変える若者たちの燃えるような意志と行動力に惹かれたのかもしれません。ちょうど大学生たちの学生運動たけなわで、彼らも世の中を変えようと戦っていました。それと重ね合わせたのかもしれません。また、このドラマでは北大路欣也が龍馬役がぴったり嵌っていましたし、おりょうさんの浅丘ルリ子も大好きな女優でしたのでそれらも合わさってのことだと思います。
それ以来、司馬遼太郎の歴史小説を幕末に限らず片っ端から読み漁りました。中でも『翔ぶが如く』や『坂の上の雲』、『世に棲む日々』などは面白く読ませてもらいました。
ただ後で調べてみると、この『竜馬がゆく』は大河ドラマとしては1994年の『花の乱』が更新するまでは歴代最低視聴率の記録保持者でした。幕末ものは人気が無いというのが定説となりました。私個人としては未だに最高の「大河ドラマ」だと思っております。
その後、坂本龍馬の役は多くの俳優が演じましたが、北大路欣也のイメージが強く、なかなかなじめませんでした。この他でよかったのは黒木和夫監督の映画『竜馬暗殺』での原田芳雄、それから同じく大河ドラマ『勝海舟』での藤岡弘です。さらに中村錦之助(後の萬屋)と吉永小百合さんが共演した伊藤大輔監督の映画『幕末』もよく憶えています。
司馬遼太郎の小説はあくまでも小説であり、歴史書ではありません。ですから人物像は司馬遼太郎の作り物です。この他にも多くの作家が坂本龍馬を描いています。それぞれの坂本龍馬像が存在します。見方によってはこうも違うのかということにも驚かされました。
私自身も歴史小説では飽き足らず、歴史書にまで踏み込んで歴史を学び始めました。学んだと言ってもあくまでも趣味の範囲で、研究したわけではありません。幕末のみならず、明治から昭和史へと知れば知るほど面白くなってきます。特に昭和史は学校でも時間切れでほとんど勉強しませんから新鮮です。身近な昭和の歴史なのに知らないことが多すぎて驚きます。教科書にはほとんど載っていない、昭和史の裏側は実に面白いです。
ただ、面白いのは年齢を重ねるごとに、時代への見方が変わってくることです。若い頃には尊王討幕を実行した薩長の志士たちに拍手を送っていましたが、その後の日本の政治の在り方を見るとそのような見方にも疑問符が付いてきます。藩閥政治は今でも続いているような気がしてなりません。年のせいでしょうか。
とにかく、たった一本のテレビドラマによって、歴史というものに大いなる興味を持つようになった少年が存在したということだけでも「大河ドラマ」の存在意義はあったのではないでしょうか。なんて、偉そうなことを言っています。
音楽や映画そのものに興味を持つと同時に、その音楽や映画の歴史についても知ることによって、一段と面白さが増すのです。そういう意味でもその歴史を知るということはどんな分野においても大切なことなのです。歴史を知ることによって、同じ過ちを繰り返さないことが大事なのです。
ただ単に『竜馬がゆく』について書こうと思っていたのに、いつの間にやら説教じみた話になって、尻切れトンボになってしまいました。ご容赦願います。
それでは今日はこの辺で。