先日のキネ旬シアターは『破壊』でした。
原作:島崎藤村
監督:前田和男
製作:2022年 日本
ちょうど60年前に市川崑監督が映画化した島崎藤村の小説『破壊』を再び映画化した作品です。1948年には木下恵介監督も映画化していました。
『破壊』といえば私が高校生の頃、涙を流して読んだ数少ない小説の中の1冊です。ちなみに初めて涙を流した作品は『フランダースの犬』でした。お恥ずかしい。
なぜ今頃この作品が映画化されたかというと、今年がちょうど全国水平社が創立されて100年にあたります。水平社はご存じの通り部落解放同盟の前身です。高校生の頃、被差別部落問題に興味を持ちこの小説を読んだという訳でした。その後もしばらく藤村に嵌りました。
話の方はというと、被差別部落出身の教師の苦悩を描いたドラマです。
瀬川丑松は被差別部落出身であることを隠し、学校の教員として勤めています。彼は父親から絶対に自分の出自を明かしてはならないと、強く言われていました。しかし、部落出身者に対する世間の差別意識と嫌がらせ、暴力は想像以上のものでした。
やがて好きな女性もできますが、彼に対する部落出身者ではないかという疑いの目が強くなっていき、彼の苦悩は増していきます。そんな時、彼はある人物と出会い、そしてある決心をするのですが・・・。
映画は明治時代の部落出身者に対する差別をテーマにしていますが、被差別部落は現在でも存在します。また現代でも数多くの差別が問題となっています。身分差別をはじめ、人種、宗教、階級、職業、学歴、職業、性差等々。この差別という問題は人間が抱えた宿命、永遠不滅のテーマなのでしょうか。劇中の思想家の言葉「差別は無くならない。なぜなら人間は弱いからだ」。この言葉が心に響きます。
涙、涙の2時間でした。但し、原作を読んだ時のように純粋な気持ちではなく、老化現象によるものも多分にありました。
それでは今日はこの辺で。