今日の「聴き比べ」は水原弘の『黒い花びら』です。
記念すべき1959年の『第1回日本レコード大賞』受賞曲です。新人歌手がレコード大賞を受賞したのは今現在でも水原弘だけです。
永六輔・中村八大、いわゆる「六・八」コンビによる最初の頃の作品です。中村八大はポール・アンカの『You Are My Destiny(君はわが運命)』にヒントを得て作曲したようです。
元は1959年の映画『青春を賭けろ』の挿入歌でした。この映画は主演が夏木陽介で、水原弘も歌手役で出演していました。
当初は無名の新人が歌うこの曲がヒットするはずもないと考えていたレコード会社はプレス数も少なく発売しましたが、思いもかけず人気が出て、気が付けば大ヒットとなり、レコード大賞を獲得し、紅白歌合戦にも出場してしまいました。翌年には映画化もされました。水原弘と水野久美の共演でした。
水原弘については私が詳しく知ったのは、1967年に『君こそわが命』カムバックしてからでした。それまでは『黒い花びら』はもちろん知っていましたが、生で歌う姿を見たことはありませんでした。
豪放磊落、放蕩三昧、大酒豪、賭博・・・、芸能界では勝新太郎と並ぶ傑物でした。
一晩で何百万も飲むような豪遊をし、その果ての借金まみれ。そしてアル中で肝硬変。若干42歳で死去。そんな彼の生涯でした。
『黒い花びら』で順風満帆なスタートを切り、歌手としても俳優としても成功を収めていましたが、1965年に花札賭博が明るみになり、芸能界から追放されました。これ以後芸能活動から遠ざかりました。ただ、「レコード大賞」の放送や歌謡番組では当時のビデオを流していましたので、私などはそれを見て知った次第です。
そして1967年に関係者の努力によって『君こそわが命』で見事にカムバックします。ところが、癖は治らないもので、またしても放蕩三昧の日々が始まり、酒浸りになり肝臓を悪くし、一方では借金まみれ。そしてとうとう1972年、肝硬変により僅か42歳の人生を閉じました。
波乱万丈の短い人生でしたが、歌手としても俳優としても魅力ある人物でした。
黒い花びら
作詞:永六輔
作曲:中村八大
黒い花びら 静かに散った
あの人は帰らぬ 遠い夢
俺は知ってる 恋の悲しさ 恋の苦しさ
だから だから もう恋なんか
したくない したくないのさ
黒い花びら 涙にうかべ
今は亡いあの人 ああ初恋
俺は知ってる 恋の淋しさ 恋の切なさ
だから だから もう恋なんか
したくない したくないのさ
カムバックしてからの映像だと思います。上手い!
亡くなる前年の映像。髭を生やしているのは薬の副作用で吹き出物が出ているのを隠すためだったようです。
ちあきなおみさんがカバーしています。このアレンジは聴きものです。
美空ひばりさんもカバーしています。ひばりさんがやくざ問題で困っているときに手を差し伸べたのが水原弘でした。
それでは今日はこの辺で。