Flying Skynyrdのブログ

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映画『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』を観る

を先日のキネ旬シアターは『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』でした。

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監督:島田陽磨

出演:中本愛子、林恵子

製作:2021年  日本

 

北朝鮮に渡った姉と58年ぶりに再会した女性のドキュメンタリーです。

 

林恵子は67歳。熊本で訪問介護の仕事をしています。子供たちは独立し、平穏な日々を送っています。しかし彼女には誰にも言えない秘密がありました。

姉の愛子が在日朝鮮人の夫と共に1960年に北朝鮮に渡っていたのです。日朝両政府による「帰国事業」によって帰国したのです。当時「地上の楽園」と呼ばれた北朝鮮

渡航後、手紙のやり取りが続くも、金の無心をする姉の変貌ぶりに落胆し絶縁しました。その後、日朝関係が悪化し音信不通になり、58年の歳月が経ちました。

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そんな時に姉の消息が知らされました。恵子自身年齢を重ね、20歳も年が違う姉を思う気持ちが頭をもたげます。そしてとうとう訪朝を決意したのです。初めての海外旅行は北朝鮮になりました。次男が同行しました。北朝鮮の政府の役人が2名同行します。政治的な会話はご法度です。

 

まずはピョンヤンへ。当然のことですが、北朝鮮にとって撮られたくない景色は撮影禁止です。工事現場や汚れた作業服姿の男たち。案内されるのはいいとこばかりです。そして姉の住む第2の都市、ハムフンへ向かいます。姉の住む家へ行きたかったのですが、付近が工事中とのことで許可が下りません。ある施設へと案内されます。

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そして、姉妹は再会するのです。涙、涙の再会です。姉の子や孫たちも来ました。和やかな再会でした。この町には他にも日本人妻が何人かいました。姉は彼女たちと仲良く暮らしていました。姉は一度でいいから日本で墓参りがしたいと訴えます。

 

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恵子は帰国後もその日本人妻たちの家族にも知らせようと奔走しますが、家族たちはいたって冷淡でした。誰一人訪朝して再会しようとする家族はいませんでした。恵子にとってはある程度予期した結果でしたが、やむを得ないことなのかもしれません。ホームページなども立ち上げて、日本人妻の帰還を呼びかけますが反応はいまいちです。恵子は政治的な話は抜きにして日朝交流を進めたいと話しますが、現実は厳しいものがあります。映画は何とも中途半端な気持ちで終了です。

 

1970年3月31日、赤軍派の田宮高麿ら9名によるよど号ハイジャック事件が起きました。彼らは乗客122人を乗せ北朝鮮へと亡命しました。当時の学生運動武装蜂起を唱える赤軍派にとっても北朝鮮共産主義の鏡のような国だったのでしょう。学生運動共産主義を標榜して、北朝鮮や中国に憧れを持っていた時代だったのです。

 

その後の北朝鮮の実態はどうだったのかは、拉致事件が表面化するとともに明らかになりました。日本人妻の帰還事業と拉致家族の奪還とでは世間の受け止め方は雲泥の差があります。自ら選んで北朝鮮に渡ったのだから、帰れなくてもそれは自己責任だという声が圧倒的です。パラダイスを夢見て北へ行ったのがバカだったのだと。あまりの言い様です。

 

日本の歴代総理が拉致事件は最重要課題と位置づけながら、いまだに手をこまねいている現実が腹立たしい限りです。拉致家族は超高齢化しているのです。時間がありません。それとも政府は何か絶望的な情報でも持っているのでしょうか?

 

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それでは今日はこの辺で。