Flying Skynyrdのブログ

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映画『ドンバス』を観る

先日のキネ旬シアターは『ドンバス』でした。

 

監督:セルゲイ・ロズニツァ

出演:タマラ・ヤツェンコ、リュドミーラ・スモロジナ、オレーシャ・ジュラコフスカヤ

製作:2018年  ドイツ・ウクライナ・フランス・オランダ・ルーマニア

2022年  日本公開

 

この映画は2018年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門の監督賞を受賞した作品です。今年になって急遽日本でも上映されることになりました。

 

2014年にロシアがクリミア半島を一方的に併合し実効支配したのと同時に、親ロシア派勢力がウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、いわゆるドンバス地方の独立を宣言し、ドネツク民共和国、ルハンシク人民共和国を名乗りました。

 

この映画はセルゲイ・ロズニツァ監督がSNSから拾った13のエピソードを基にドンバス地方での現実をブラック・コメディ風に描いた作品です。

 

この戦争はプロパガンダやフェイク・ニュースによる情報戦とテロなどの非正規戦が組み合わさった、いわゆるハイブリッド戦争と呼ばれるものです。フェイク・ニュースやプロパガンダ放送が作られてゆく過程や方法がよくわかります。

 

実際、今年の2月にロシアがウクライナに侵攻して始まったウクライナ戦争が報道されるまで、ウクライナの詳しい情勢はほとんどわかりませんでした。ドンバスという名前も恥ずかしながら今回の戦争報道で初めて知りました。映画もこのロシア侵攻が無ければ日本での公開は無かったのではないでしょうか。

 

この映画はあくまでもドキュメンタリーではなくフィクションです。ですが、ドキュメンタリーよりもリアルで生々しいです。どのエピソードも暗く救いようがありません。フェイクニュースの撮影現場、市議会会場、病院、検問所、地下シェルター、路上での懲罰兵士の見せしめ、結婚式場などが映し出されます。結婚式の模様などは訳がわかりません。理解不能です。ラストは再びフェイクニュースの撮影現場です。これが強烈です。エンディングはその遠景を延々と流します。

 

そしてこの2014年の戦争が継続し今年の戦争へと発展したのです。但し、今2022年現在、現実に起きているウクライナの実態はこんなもんではないでしょう。もっともっと悲惨な状況だと思います。それにしても、同じウクライナ国民の間の対立というか分断というか、凄まじいものがあり、改めて国の統治の難しさを感じました。

 

以前観た『赤い闇 スターリンの冷たい台地で』に描かれていたように、ロシアとウクライナ間の複雑な歴史がそこには横たわっているのです。

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それでは今日はこの辺で。