今日は、ブリットポップの過渡期に現れた、興味深いバンド『クーラ・シェイカー』について書いてみます。60年代のロックとインド音楽を見事に融合させています。
以前の記事で少しだけ触れています。参考までに。
結成は1990年と古いのですが、デビューは『クーラ・シェイカー』とバンド名を変更した1996年です。
メンバーは、
クリスピアン・ミルズ (Crispian Mills,vo,g)
ジェイ・ダーリントン (Jay Darlington,org)
アロンザ・ベヴァン (Alonza Bevan,b)
ポール・ウィンターハート (Paul Winterhart,ds)
の4人組です。
1996年にデビューアルバム『K』をリリースします。
ヴォーカルのクリスピアンは仏教徒でバンド名もインドの皇帝の名から由来しているそうです。このアルバムのリリース前に発表されたデビューシングル「Gratefu When You're Dead」がいきなりヒット、続く「Tattva」に至ってはいきなり4位登場、3週で10万枚の大ヒットになりました。ちなみに「Gratefu When You're Dead」はグレートフル・デッドのジェリー・ガルシアとジャム・セッションをするという内容になっています。そして3枚目のシングルが「Hey Dude」で全英2位となりました。そして満を持してリリースした本作は初登場1位を記録しました。オアシス以来のデビューアルバム売上を記録し、日本でも大ヒットしました。1曲目の「Hey Dude」からベース、ドラムのグルーヴ感とギターのカッティングに圧倒されます。カッコいいです。全編サンスクリットの曲、さらに60年代を思わせるロックンロール、サイケデリックロックとまさにインド音楽とロックの見事な融合です。
この後ジョー・サウスのカバーでディープ・パープルで有名な「Hush」をシングルヒットさせ、1999年にセカンドアルバム『Peasants, Pigs and Astronauts』をリリースします。
しかしこの間、メディアとひと悶着あって、彼等は大バッシングを受けます。鉤十字(卍)に関する発言がナチス・ヒトラーを美化するものだというのです。クリスピアンは誤解だと反論しますが、バッシングの嵐は止みませんでした。そのせいもあったのかアルバムの売れ行きもいまひとつでした。この作品は前作の延長線上で、相変わらず見事な融合を見せています。出来は前作を凌いでいるのではないでしょうか。
そしてバンドはこの直後あっさりと解散を宣言します。わずか3年で2枚のアルバムを残し消えました。
そのごメンバーはそれぞれに活動し、クリスピアン・ミルズ は2001年に3ピースバンド『ザ・ジーヴァス(The Jeevas)』を結成し、2002年と2003年にそれぞれアルバムを発表します。『1234』と『Cowboys & Indians』です。
クリスピアンが「クーラ・シェイカーとは違ったことをやりたかった」という通り、ストレートなロックアルバムになっています。2枚目ではCCRの「雨を見たかい」やボブ・ディランの「戦争の親玉」をカバーしています。
しかしこれも商業的には成功といえず2004年に解散してしまいます。
2005年に再結成の話が持ち上がりジェイ・ダーリントンを除くメンバーは同意し、新たにハリー・ブロードベント (Harry Broadbent,org)を加え、再結成が実現しました。富士ロックフェスにも参加し、日本での変わらぬ人気を再確認しました。
そして2007年に再結成後の最初のアルバム『Strangefolk』をリリースします。
この新作ではインド風味がぐっと後退し、メロディーも美しくなり、60年代の雰囲気は生かしつつ、これはこれで十分楽しめますが、やはりファースト、セカンドと比較すると物足りなさは否めません。私見ですが。
そして3年ぶり、2010年には4枚目のアルバム『Pilgrim's Progress』を発表します。
美しいメロディーとともに戻ってきました。インド音楽はここでも影を潜め、サイケ、フォーク調の曲が多くなっています。いいんですが、どうしても前作同様物足りなさを感じてしまいます。あの飛び跳ねるようなロックンロールとインド音楽との融合のイメージが強すぎて払拭できません。最初の2枚を聴いていなければ、本作と前作は十分満足できるアルバムだと思うのですが。それでもこんな感想は、2,3年後にはまた変わっているかもしれませんが。
昨年、5枚目のアルバム『K 2.0』をリリースしましたが、残念ながら未購入です。リストには上がっているのですが、なかなか購入に至りません。まだ高いのです。
映像を2本ご覧ください。
それでは今日はこの辺で。