主演:ジョセフ・ファインズ、ショーン・ドゥ、エリザベス・アレンズ
制作:2016年 中国、香港、アメリカ
パリ・オリンピックの金メダリスト、伝説のランナー、エリック・リデルのその後の人生を描いた作品です。パリ・オリンピックまでの話は1982年の映画『炎のランナー』で描かれていましたが、この『最後のランナー』はその後のお話ということになります。『炎のランナー』は随分昔に観ましたが内容はすっかり忘れていました。
実話です。ネタバレです。忘れないうちに書きます。備忘録ですのでご容赦願います。この頃は物忘れに拍車がかかっています。
パリ・オリンピックにおいてイギリス代表の陸上選手として400メートルで金メダルを獲得したエリック・リデル。彼は敬虔なクリスチャンです。大学卒業後は生まれ故郷の中国で宣教師として教師をしながら布教活動を行うと決断します。その中国での彼の運転手役、ジ・ニウが凧を作りながら回想するシーンで映画が始まります。
エリックはカナダ人の妻フローレンスと2人の娘と共に天津にやってきます。そこでエリックは布教活動と共に学校で英語や化学、スポーツを教えています。
1937年日中戦争が始まると、日本とイギリスの関係も悪化し、イギリス領事館はエリック一家に国外退避を勧告しますが、エリックは家族だけをカナダに帰国させ、自分は奉仕活動を続けると言います。しかしその後、日本軍がエリックの自宅に侵入し自宅を略奪してしまいます。それでもエリックは日本のために祈りを捧げます。
自宅を失ったエリックは赴任先の学校で他の避難者たちと暮らし始めます。そんな暮らしの中でもエリックは走ることを忘れません。スポーツや勉強を通して子供たちと触れ合う姿を見て、運転手のニウは尊敬の念を抱きます。シャオシートゥという身寄りもなく路頭に迷っていた子供もエリックを慕い始めます。そのシャオシートゥがカナダの妻から子供が生まれたという手紙を届けてくれ、エリックは一安心しました。
1941年12月、日米が開戦し太平洋戦争が始まると、日本とイギリスも戦争状態になり欧米人に対する弾圧が厳しくなり、エリックも山東省のウェイシン収容所に収監されてしまいます。ニウとシャオシートゥは必死にエリックの行方を捜します。そしてようやく収容所に入れられているのを見つけます。
収容所の所長クラタはオリンピックの金メダリストだというエリックに目をつけ、レースで勝負しようと持ち掛けます。そしてエリックに体力をつけさせるために他の者より多くの食事を与えます。ところがエリックはその食事を子供たちに与えてしまいます。
レース当日、大声援の中レースが始まります。初めはエリックがリードしていましたが、途中でエリックが倒れてしまいます。クラタが先にゴールイン。エリックは負けてしまいます。体力が持たなかったのです。エリックが食事をとっていなかったことを知ったクラタは怒り狂い、エリックを反抗した若者デヴィッドと共に独房に監禁してしまいます。この独房は屋根もなく雨ざらしで直射日光を浴びます。体力は著しく奪われます。
数日後二人は解放され皆の元に戻ってきました。ニウとシャオシートゥは収容所の糞尿を運ぶ仕事に就いていて、外から食事を差し入れたり、外の情報を知らせていました。
しかし状況は悪化の一途。デヴィッドに対する日本人による拷問が続きます。耐えられなくなったデヴィッドを逃がすためにニウとシャオシートゥは糞尿を運ぶ桶の中にデヴィッドは入れ逃がしてあげる作戦を立てました。村人は日本軍の目を欺くために、子供たちに大量の凧を上げさせたのでした。凧が落ちて電気の通った鉄条網に引っ掛かり燃え出すのを消すのに日本兵が必死になっているすきにまんまと逃げおおせたのです。
しかし、翌日から逃亡者を探すために、収容者たちには厳しい拷問と食事制限が待っていました。疑いをかけられたアメリカ人ヒューは独房に入れられ気管支炎を発症して、重篤な状態になりました。エリックは見かねてクラタにレースを申し込みました。勝ったら外部から薬を持ちこんでもいいという条件です。しかし、エリック自身も病に蝕まれていました。十分に体を動かすこともできないくらい衰弱しています。それでもエリックは毎日トレーニングをして準備しました。
レース当日、エリックは収容者が祈る中、序盤はリードされるものの、途中で抜き返し大差で勝利しました。収容所は薬の到着を待ちます。シャオシートゥが薬を持って鉄条網を上がってきました。約束通り鉄条網の電気は切られていましたが、班長が憎しみのあまりスイッチを入れてしまいます。シャオシートゥは感電死してしまいます。見せしめのために死体はそのまま鉄条網にかけられたままにされました。日本軍はエリックを解放し帰国させる決定をしますが、エリックは妊娠しているを優先して欲しいと申し出、日本軍はそれを了承します。
1944年クリスマス。収容者たちは賛美歌を歌います。エリックは歌いながらピアノの鍵盤に手を置きます。血のにじむ涙がこぼれます。終戦の数カ月前、エリックは亡くなります。脳腫瘍でした。雪の中、収容者たちは葬儀を行います。外から祈るニウにはエリックの形見が渡されます。それはエリックの父からエリックに贈られた懐中時計でした。1945年8月、戦争は終わりました。喜ぶ収容者たち。
ニウの回想。「リデルから多くの贈り物をもらったが、一番大きなものは希望という恩寵だった」。
オリンピックの金メダリストがその後、このような過酷な人生を送ったということは知りませんでした。宗教心というものがここまで人間を強くするのだということを、またしても見せつけられた思いです。
先週に引き続き「収容所」ものでした。実話ということですので、この収容所での出来事もほぼ実話なのでしょう。ここでの虐待はナチスのそれと変わりません。日本陸軍も海外の戦場では恐るべき殺戮を繰り返してきました。もちろん国内での反政府活動や言動に対する弾圧も厳しいものが有りました。
戦後、それらに対する反省を行ってきたはずなのに、なにやらキナ臭い動きが目立ち始めた昨今です。恐ろしいことが起きませぬように願うばかりです。
それでは今日はこの辺で。