Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『世界で一番美しい少年』を観る

先日のキネ旬シアターは『世界で一番美しい少年』でした。

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監督:クリスティーナ・リンドストロム、クリスティアン・ペトリ

出演:ビョルン・アンドレセン池田理代子酒井政利

制作:2021年  スウェーデン 2021年  日本公開

 

ビョルン・アンドレセンを憶えているでしょうか?

若い人のほとんどは知らないと思いますが、私と同世代かそれ以上の方達は憶えていると思います。

彼は1971年、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品『ベニスに死す』で主演に抜擢された当時無名の少年でした。その美しさに世界中が沸き、日本でも一気に人気者になり来日も果たしました。

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私も当時は高校生で、映画にどっぷり嵌っており、市のサークルにも参加していた関係で一部の映画館は無料で映画を観ることが出来ましたので、上映されるや学校さぼって(さぼりの常習者です)早速観に行きました。

ヴィスコンティ監督作品はそれまでにも若者のすべて『山猫』『異邦人』『地獄に堕ちた勇者どもなどを観ており、好きな監督のひとりでした。

映画の内容は老作曲家が静養のために訪れたベニスで、ふと知り合った美少年を追い求め、やがて疫病が蔓延する町で罹患し死んでゆく、というトーマス・マン原作の映画です。ヴィスコンティ自身が同性愛者だったのは有名な話です。

 

この『世界で一番美しい少年』はその美少年ビョルン・アンドレセンの数奇な生い立ちから、『ベニスに死す』出演後の彼の波乱の人生を描いたドキュメンタリーです。

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彼の父親はもともといません。名前もわかりません。母親は彼が幼い頃に失踪、その後死体で発見されます。そして祖母に育てられます。その祖母は彼を有名人にしたくて勝手に映画のオーディションに応募します。そこでヴィスコンティ監督に見いだされました。そして『ベニスに死す』への出演。これで彼の人生は多くく変わってしまいました。彼はただ音楽をやりたかっただけだったのですが。

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映画が上映されるや否や映画界やマスコミ界は黙っていませんでした。監督は彼を『世界で一番美しい少年』と讃えました。それからはあちこちに引っ張りだこ。来日も果たし、CM出演やレコーディングと大忙し。

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その後結婚。二人の子供もできましたが、長男を幼い頃に死なせてしまいました。このことが彼の心を深く傷つけました。もともと家庭の暖かさに恵まれずに育ったため、子供とどのように接していいかもわからなかったのです。

 

現在、彼は俳優・ミュージシャンとして活動しています。このドキュメンタリーを撮るにあたって、彼は再び日本を訪れ、当時の音楽プロデューサーの酒井政利や彼の顔を『ベルサイユのばら』のモデルにしたという漫画家の池田理代子などと対談しています。

そしてようやく自分の生い立ちと向き合おうとします。自分の母親の死の真相を探るのです。父親の名前は不明です。母親は教えてくれなかったのです。そして当時の警察の調書を見せてもらいます。そして大きなショックを受けるのです・・・。

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今のビョルンはすべてを失い何もありません。娘がたまに訪ねてくるくらいです。それでも彼は『たくさん失いすぎると、かえって生きるのが楽になる』と言うのでした。

 

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それにしても『ベニスに死す』から約50年。その年月が人間の顔をこれほど変えてしまうのでしょうか。顔はその人の人生を表わすと言いますが、苦悩の人生、それが表出した表情でした。

 

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それでは今日はこの辺で。