先日のキネ旬シアターは『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』でした。
監督:トッド・ヘインズ
出演:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ビル・キャンプ、ティム・ロビンス
製作:2019年 アメリカ 2021年 日本公開
有害物質の危険性を隠し続ける巨大企業に立ち向かう弁護士たちの戦いを実話をもとにして描いた社会派サスペンス映画です。
1998年、オハイオ州シンシナティの有名な法律事務所に勤めるロブ・ビロットをウェスト・バージニア州で農場を経営するウィルバー・テナントとその弟が祖母の知り合いということで訪ねてきます。
話は彼らの土地が大手化学メーカーのデュポン社の工場から出た廃棄物で汚染されているということでした。その証拠だと大量のビデオテープを持ってきたのです。ロブは自分が企業側の弁護士であることを理由に一旦帰ってもらいました。が、気になったロブは祖母を訪ねてがてら農場を訪れました。
農場の近くまで来ると、笑顔を見せる子供たちの歯は真っ黒。しかも牧地は荒れ果て、農場の牛は190頭も死んだという。それはデュポン社が産業廃棄物を近くの川に流し、それを牛たちが飲んだせいだというのです。
不審に思ったロブは環境庁に問い合わせ、調査資料を取り寄せました。それをウィルバーに見せると「そんなものは出鱈目だ」と一蹴されます。すると、その場で発狂したように暴れまわる牛の様子を目にしたのです。そしてウィルバーからビデオテープは見たのかと問われました。帰宅してそのビデオを見て、その衝撃的な内容にショックを受け、訴訟を起こす決意をするのです。
ところが相手は超大手企業です。様々な妨害行為が始まります。めげそうになる気持ちを奮い立たせ、ロブは敢然と立ち向かっていくのですが・・・・。長い長い戦いがここから幕を開けます。
これはアメリカ版『水俣廟』です。公害に苦しむ住民たちは何が原因なのかわかりません。その原因を弁護士は突き止めていきます。そこには多くの苦悩と苦労が待ち受けています。家庭を置き去りにし、健康を損ない苦しみます。それを助けてくれたのは、困っている人たちの役に立ちたいという一心と、それに寄り添いながら心の支えになった妻と家族たちの存在でしょう。
ロブは2015年現在も訴訟で戦い続けています。
有害であると知りつつ隠し続ける企業体質。大企業の隠蔽体質というものはどこの国も同じようです。
この事件の原因となった物質はPFOA(ペルフルオロオクタン酸)と呼ばれるもので、この当時はまだ世の中には知られていませんでした。これは戦時中に戦車の防水加工に使われたものでした。デュポン社はこれを研究してフライパンのテフロン加工に採用したのです。そしてこれが大ヒット商品となり巨額の利益を得たのです。その研究過程で多くの従業員が癌や妊婦が奇形児を生んだのです。デュポン社はそのことを知りながらひた隠しに隠してきたのです。
静かに静かに、そして重々しく、あっという間に126分が経過しました。テフロン加工には気をつけましょう。
昨年観た『MINAMATA-ミナマタ』と共通するものがありました。
それでは今日はこの辺で。