Flying Skynyrdのブログ

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映画『EO イーオー』を観る

先日のキネ旬シアターは『EO イーオー』でした。

 

監督:イエジー・スコリモフスキ

出演:サンドラ・ジマルスカ、ロレンツォ・ズルゾロ、イザベル・ユペール

製作:2022年  ポーランド・イタリア

 

ポーランドの監督スコリモフスキがロベール・ブレッソン監督のバルタザールどこへ行くに触発され、ポーランドのサーカス団で暮らしていたEO(イーオー)と呼ばれるロバの生きざまを追った映画です。

 

高校生時代に映画にのめり込んでいた頃、難解な映画を観てわかったつもりでいい気になっていた頃、ちょうどその頃にこの『バルタザールどこへ行く』を見たことを思い出しました。この映画もロバの生涯を描いた映画でした。人間の勝手な振る舞いでロバの一生が左右されてしまう不条理を描いた映画だったように記憶しています。

 

この『EO イーオー』もまた人間の勝手さに振り回されるロバの話です。

ロバのEOはポーランドのサーカス団で女性のパフォーマーカサンドラのパートナーとして、彼女に目いっぱいの愛情を注がれ穏やかな日々を暮らしていました。ところがある日、動物愛護団体に糾弾されたことでサーカス団は破産してしまいます。そのためEOたち動物はそれぞれどこかに引き取られれ行きます。


EOは引き取られた先の農場が嫌で逃げ出してしまいます。ここからEOの放浪の旅が始まります。途中、様々な人間たちや出来事に出会います。果たしてロバの目には人間たちの行動はどのように映るのでしょうか・・・。

なんともはや、凄い映画を観てしまいました。ロバの目から見た人間社会です。ロバは馬よりも下等だという扱いを受けます。そんな環境に嫌気がさしたのか?、EOは人間の手から逃れて放浪します。しかし、どこへ行っても人間に捕まります。そしてその人間たちを見るEOの目がこちらに訴えかけてくるようです。私には「人間はなんて愚かなんだ!」と言っているように見えました。

繋がりなく場面は展開し、ラストはなんとおそらく牛の食肉処理場でしょう。恐ろしい、やめてくれ!、と叫びたくなりました。

 

動物愛護団体がサーカスでパフォーマンスをする動物は虐待されていると訴えますが、このロバを見ていると、大きなお世話だ、やめてくれと言いたくなります。せっかく幸せに暮らしていたのに、それを奪われてしまったのだから。ロバもそういう目をしていました。

そういった動物愛護運動も動物の都合も考えず、人間の勝手な自己満足に酔っているところもあるのかもしれません。この映画にはその他にも多くの野生動物が登場します。また美しい自然が破壊されていく様も描かれています。人間が動物と自然の領域を犯し破壊しているのです。人間と動物と自然の共生は喫緊の課題です。そんなことを訴えているように私には映りました。

 

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それでは今日はこの辺で。