先日のキネ旬シアターは『正欲』でした。
原作:朝井リョウ『正欲』
監督:岸善幸
脚本:港岳彦
製作:2023年 日本
直木賞作家の朝井リョウの小説『正欲』の映画化です。脚本は先日の『アナログ』と同じく港岳彦です。
家庭環境も性的志向も異なる5人の人物が、ある事件をきっかけに交差します。
登場人物は次の通りです。登場順に。
佐々木佳道(磯村優斗):会社員。30歳。中学3年の時に広島から横浜に転校。親しい友人はいない。両親の死をきっかけに広島に戻る。
桐生夏月(新垣結衣):広島のショッピングセンターで売り子として働いている。実家暮らし。親しい友人も恋人もいない。毎日悶々と暮らしている。佐々木佳道の同級生。佐々木が広島に戻ったことを偶然知る。
寺井啓喜(稲垣吾郎):横浜で暮らす検事。妻と不登校の小学生の息子と3人暮らし。最近、息子がYouTubeの動画配信をしたいと言ってくるが反対する。妻とは意見が合わず口論が絶えない。
神戸八重子(東野綾香):大学生。男性恐怖症。学園祭の「ダイバーシティ・フェス」の委員。男性恐怖症なのになぜか同級生のダンサー・諸橋大也に魅かれている。
諸橋大也:大学生。神戸八重子と同級生。ダンサーズ・サークルに所属。準ミスターに選ばれるほどの容姿。しかし、親しい友人はいない。
この5人の人生が交錯していきます。この中の3人にはある共通点がありました。それが「水」です。
最近、富に多様性を含んだフレーズが使われるようになっています。「多様性を認めよう」「多様性のある社会を」などなど。この映画は性的志向の多様性を本当に理解できるのか、という疑問を投げかけています。
LGBTについてはかなりの部分、社会に認知されてきています。この映画に登場する性的指向は人間には性的興味を感じないというLGBT以上のマイノリティです。果たしてその志向を本当に理解できるのか、そのための生きづらさに悩む人間の苦しみとその人生を理解できるのか。
いや、そうではなく「普通」とはなんだ、という問いかけ、か。普通の人間、普通の暮らし、などなど自分を「普通」だと思っている人間にとって、彼らを多様性云々等と言って本当に理解することなどできるのか。やはりそこには絶望的な溝があるような気がします。エンディングはまさにその溝の深さを感じさせるものでした。何とも重苦しい気分になりました。
残念ながら朝井リョウの原作小説は読んでいませんでした。この映画を観てぜひともこの機会に原作本を読んでみようと思います。
そういえば昨年観た映画『波紋』でも「水」が重要な役割を果たしていました。
当然ながら私などには理解の外です。
それでは今日はこの辺で。