監督:タロン・レクストン
主演:クセニア・ソロ、マリア・ベロ、メアリー・リン・ライスカブ
制作:アメリカ 2016年(2018年 日本公開)
フェデリコ・フェリーニ監督の映画に魅了された女性が、フェリーニに会いたくてイタリアまで旅するという話です。
母子家庭で育ったルーシーは現在20歳。母親の庇護のもと世間知らずのまま育ってきました。母親は娘を守ることに全精力を使ってきました。
その母親に末期癌が見つかりました。母親は何とか娘を自立させなければと思いますが、癌であることは打ち明けられません。母親が叔母と話をしているのを立ち聞きしてしまったルーシーは何とか独り立ちしようと仕事を探します。
しかしうまくいきません。面接の帰り、たまたま通りかかった劇場でフェリーニ映画祭が催されていて、吸い込まれるように入って、そこでフェリーニ映画と出会います。
映画『道(ジェルソミーナ)』が終わるころには感激のあまり、涙が溢れていました。帰りにはフェリーニのビデオを買い込んで、夜通し観るという熱中ぶりでした。
そしてイタリアのフェリーニ事務所にフェリーニに会いたいと電話をします。するとマリオという男の人が出て、「明日来なさい、フェリーニが待っている」と言われます。
ルーシーは母親や叔母に黙ってイタリアへと旅立ちます。そこからはまるでフェリーニの映画を観ているような、さまざまな出来事が待ち受けています。
ローマに行く予定が手違いでヴェローナに着いてしまいます。そこからまたマリオに電話しますが、「今フェリーニはいない。そこですこし時間つぶしをしろ」と言われます。そして出会った人たちに連れていかれたパーティーや舞踏会のシーンなどはまるで『甘い生活』です。
途中で画家の青年と出会い二人はまたたく間に恋に落ちます。しかしフェリーニに会いたい欲求は抑えきれず、またマリオに電話します。すると「次の電車で来なさい」と言われます。ルーシーは青年に別れを告げますが、青年はルーシーに求愛し結婚を申し込みます。しかしルーシーは出かけます。
が、駅に到着すると映画『道』に出てくる怪力男が通りかかり、列車に乗り込みます。ルーシーは思わず後をつけその列車に乗り込みますが、それはヴェニス行きでした。ヴェニスに到着して再びマリオに電話しますが「約束を守らない人間は、もう来なくていい」と言われてしまいます。
ヴェニスでは男に言い寄られ、変なパーティーに連れていかれ危ない目に遭いますが、たまたま逃げ込んだ家で電話を借り、怖さのあまりアメリカの実家に電話をします。そして母親の死を知らされます。ルーシーは悲しみに暮れながら眠ってしまいます。
ニーノ・ロータの墓で目を覚ますと老夫人がトランペットで『ジェルソミーナ』を吹いています。どうしてイタリアへ来たのかと訊ねられてフェリーニの話をすると、この老夫婦はかつて『サテリコン』に出演したことがあり、フェリーニは友人だからということで住所を書いたメモを渡されます。もう何が何だか分かりません。
ルーシーは再びマリオに電話して「これから行く」と言い切ってローマに向かいます。
そしてその住所を訪ねると、フェリーニらしき人物が現れます。そして様々な話をしてくれます。が、いつの間にか、そのフェリーニらしき人物が画家の青年に変わってしまいます。
そして数年後、フェリーニ監督の死がニュースになりました。ルーシーは母親のいない我が家に戻っています。そして再びフェリーニ映画祭でフェリーニの映画を鑑賞しました。左隣には画家の青年がいます。右隣には母欧亜の写真がありました。おしまい。
こうなるともはやファンタジーです。フェリーニ抜きだと、世間知らずのお嬢様が、知らない土地を旅することで成長していくというロードムービーのようなものです。
そこにフェリーニ映画へのオマージュを絡めたところがこの映画の注目された点だと思います。『道(ジェルソミーナ)』『81/2』『甘い生活』などのシーンを取り入れたり、再現したりでこの監督がフェリーニをこよなく愛していたということはよく理解できました。ただストーリーにちょっと無理があるような気がしました。少女の成長物語なのか、フェリーニへのオマージュ映画なのかどちらかに絞ったほうが良かったのではないでしょうか。
心に残った言葉「大切な存在は近くにあるもの。でも人は遠くに行かないとその存在に気がつかない。」
この女優クセニア・ソロはかわいいです。初め若かりし頃のオードリー・ヘップバーンを思い出しました。フェリーニの映画はしばらく見ていません。久しぶりに『道』を観たくなりました。
それでは今日はこの辺で。