『ピエール・エテックス・レトロスペクティブ』と題されたピエール・エテックスの作品を上映する特集の一環です。
今回の特集では、長編4作品と短編3作品を一挙公開。『恋する男』を除く6作品が、日本では劇場正式初公開となるそうです。
破局(短編)
監督・脚本:ピエール・エテックス、ジャン=クロード・カリエール
12分の短い映画。セリフ無し。別れを告げる手紙を受け取った男が、こちらも負けじと別れの手紙を書こうとしますが・・・。
恋する男(長編)
監督・脚本・主演:ピエール・エテックス
引きこもりの男が両親に結婚を命じられ、相手を探しに街へ出かけますが、失敗ばかり。挙句にはテレビに映る歌手の女性に惚れてしまい、彼女と結婚するために奔走するのですが・・・。
両作品とも『昼顔』などで知られるジャン=クロード・カリエルが脚本。
ピエール・エテックスは映画監督、俳優だけではなく道化師、イラストレーターなどいくつもの顔を持つ多能な人物です。
1928年、フランス生まれです。幼いころからチャップリンやキートンに夢中になりサーカスやキャバレーの道化師、グラフィックデザイナーなどの職を転々とし、その後ジャック・タチのスタッフとして働きます。『ぼくの伯父さん』では助監督に起用され、出演もしました。またポスター担当しました。
1961年に短編映画『破局』でデビュー、2作目の『幸福な結婚記念日』でアカデミー賞最優秀短編映画賞を受賞し、長編映画に取り掛かりました。
一方、俳優としても活躍しました。ロベール・ブレッソンの『スリ』、ルイ・マルの『パリの大泥棒』、フェデリコ・フェリーニの『フェリーニの道化師』、大島渚の『マックス、モン・アムール』などにも出演しました。
彼の映画は権利問題で長く上映されませんでしたが、多くの人の署名活動で、裁判に勝訴し権利を取り戻すことができました。その結果、ほとんどの作品がデジタル・リマスター化し、多くの国で上映されるようになりました。しかし、2016年、エテックスは87歳でこの世を去りました。日本でも6作品が劇場初公開となります。
両作品ともストーリーはどうということもなく、男性が失恋するというどこにでもある話です。ただ面白いのはエテックスの動きのギャグです。チャップリンのような派手さはありませんが、計ったような失敗続きのギャグなどは思わず笑ってしまいます。
チャップリン映画と違って、いかにもフランス映画という臭いがプンプンしていました。何か映像を観ているだけで懐かしさがこみ上げてきました。
『破局』
『恋する男』
それでは今日はこの辺で。