カントリーロックにしろ、その後のオルタナティヴ・カントリーにしろ日本ではほとんど人気のないジャンルです。それでもカントリーはアメリカでは脈々と受け継がれて来ています。
1960年代のバーズ、フライング・バリット・ブラザースの立役者グラム・パーソンズの遺伝子でも入っているのでは、と疑いたくなるようなカントリーロックの後継者がノースカロライナ州から現れたのが、1994年のことでした。それがライアン・アダムス(Ryan Adams)とケイトリン・キャリー(Caitlin Cary)を中心として結成されたウィスキータウン(Whiskeytown)です。
当初のメンバーは
ライアン・アダムス(Ryan Adams,vo,g)
ケイトリン・キャリー(Caitlin Cary,fidle,vo,perc)
フィル・ワンドシャー(Phil Wandscher,g,vo)
エリック・ギルモア(Eric Gilmore,b)
スティーヴ・グロスマン(Steve Grothmann,ds)
でした。
彼らのデビューは1995年のファーストアルバム『Faithless Street』のリリースでした。このアルバムはマイナーレーベルのムード・フード・レコードというところからのリリースでしたが、このアルバムが評判を呼び、ゲフィン傘下のアウトポストから再発されました。その時に大幅に未発表曲が追加されました。逆に「オクラホマ」という曲が削除されてしまいました。これはライアン・アダムスの意向のようです。
ウィスキータウンはこのアルバムによって、ジェイホークスやウィルコ、サンヴォルトなどと並び称されるオルタナ・カントリーの星になりました。
オープニングの曲やその他にもパンクっぽい曲がありますが、基本的にはカントリーロックです。グラム・パーソンズのソロアルバムにも通じる曲がたくさん散りばめられています。1曲だけケイトリンがヴォーカルを執っていますが、これがエミルー・ハリスとは違ったいい味を出しています。
プロデュースはクリス・スタミー(Chris Stamey)とウィスキータウンです。
そしてメジャーからのアルバム『Strangers Almanac』を1997年にリリースしますが、メンバーのエリック・ギルモアとスティーヴ・グロスマンがバンドを去ります。代わりにジェフ・ライス(Jeff Rice,b)とスティーヴ・テリー(Steven Terry,ds)が加入します。
このアルバムも2008年には2枚組のデラックス・エディションとして再発されました。
プロデュースはジム・スコット(Jim Scott)です。
このアルバムはファーストがカントリーロックとしてはまだ未完成というかちょっと中途半端だったのに比べ(それはそれでいいのです)、ほぼ完ぺきなカントリーロック(オルタナ)の名盤に仕上がりました。
しかし、このアルバムのためのツアー中にライアン・アダムスとケイトリン・キャリーを残してメンバーは辞めてしまいます。途中でメンバーに加わったマルチプレイヤーのマイク・デイリー(Mike Daly,g,b,key,mandlin,vo)の3人になってしまいました。
それでもバンドは新たにメンバーを迎え1999年にサードアルバムを制作しました。しかし、レコード会社の解散があって、レコーディングされたアルバムはお蔵入りになってしまいました。そしてバンドは解散に至りました。
そして解散後、2001年にようやくユニバーサル傘下のロストハイウェイ・レコードからサードアルバム『Pneumonia』がリリースされました。
プロデュースはグリン・ジョンズの息子イーサン・ジョンズ(Ethan Johns)です。
参加したミュージシャンは3人の他に
ブラッド・ライス(Brad Rice,g)
ジェニファー・コンドース(Jennifer Condos,b)
リチャード・カウソン(Richard Causon,key)
ジェイムス・イハ(Jamens Iha,g,vo) スマッシング・パンプキンズ
トミー・スティンソン(Tommy Stinson,g,dobro)
ジェイムス・アウモニア(James Aumonier,celeste)
イーサン・ジョンズ(Ethan Johns,ds,d,mandolin,key,perc,g)
です。
このアルバムはこれまでの2枚のアルバムとは趣を異にします。ライアン・アダムスがこれまで以上に大きくフィーチャーされ、まるでソロアルバムのようです。その代わりにライアン・アダムスの才能が大きくクローズアップされる形になりました。穏やかなアコースティクサウンドとカントリータッチの曲。前作でもジャクソン・ブラウンを思わせるメロディなどもありましたが、今作でもSSW的な、フォーク的なサウンドとメロディになっています。
こうしてウィスキータウンは消滅してしまいましたが、ライアン・アダムスはこれ以降ソロ活動を始めます。
2000年にアルバム『Heartbreaker』でソロデビューし(エミルー・ハリスとのデュエットもあり)、2001年には2枚目の『Gold』のシングル「ニューヨーク、ニューヨーク」が大ヒットし、アルバムも大ヒットし成功を収めます。この頃はオルタナカントリーというよりはオルタナティヴ・ロックという感じです。
その後もコンスタントにアルバムを出し続け、私も途中まで付き合いましたが2007年の『Easy Tiger』が最後になりました。
彼は数々の暴言や横暴な態度で有名です。最近の消息は分かりませんが、彼のことですから相変わらず気ままにやっているでしょう。
一方最後までウィスキータウンでライアン・アダムスのわがままに付き合ったケイトリン・キャリーはその後3枚のソロアルバムをリリースしています。これがなかなかいいのです。
ファーストは2002年『While You Weren't Looking』です。
ここではウィスキータウンで最後に一緒だったマイク・デイリーが参加しています。 ほとんどの曲が2人の共作になっています。
翌2003年には『I'm Staying Out』をリリースします。
ここではバッキングヴォーカルでメリー・チェイピン・カーペンターが参加しています。ギターではタッド・コックレルが参加。この人とコンビを組むことになります。
マイク・デイリーとウィスキータウンでプロデュースもしたことがあるクリス・スタミーもミュージシャンとして参加しています。
2005年にはサードアルバム『Begonias』をリリースします。
セカンドで参加したタッド・コックレルが参加し、ほとんど二人の共作曲になります。
残念ながら日本ではほとんど人気がありません、というかあまり知られていません。当然日本盤も発売されていません。もったいない限りです。
ウィスキータウンにしろライアン・アダムスにしろアメリカでの人気に比べたら日本での知名度は驚くほど低いです。カントリーロックの人気の低さが響いているのでしょうか。
ウィスキータウンを未だ書いていなかったことに気付き急遽書いた次第です。とっくに書いたつもりでいました。ボケてます。
Whiskeytown - Faithless Street
Ballad of carol lynn - Whiskeytown
Ryan Adams - Gimme Something Good
それでは今日はこの辺で。