Flying Skynyrdのブログ

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聴き比べ『惜別の唄』

今日の「聴き比べ」は『惜別の唄』です。

またしても抒情歌です。といっても、私がこの曲を初めて聴いたのは小林旭が歌った「惜別の唄」でした。当時は抒情歌などという認識はありませんでした。

ところが、今聴くとグサッと胸に突き刺さります。凄い歌だったのです。

詞は島崎藤村「高楼(たかどの)」という8連の詩から3、4、6、8番に当時の中央大学の学生だった藤江英輔が曲を付けたものです。

藤江英輔は1944年当時、軍需工場に勤労動員中でしたが、召集令状により戦地に赴く友人に思いを込め作った曲でした。当時は「無事を祈る」ということは言えず、「武運を祈る」としか言えませんでした。この歌が、やがて工場で自然に広まり、友を送るたびに歌われるようになりました。今では中央大学の学生歌のようです。

戦後になって島崎藤村の遺族の了解を得て、中央大学グリークラブがレコーディングしたようです。

 

惜別の歌

作詞:島崎 藤村

作曲:藤江 英輔

 

遠き別れに 耐えかねて

この高楼に 登るかな

悲しむなかれ 我が友よ

旅の衣を ととのえよ

 

別れと言えば 昔より

この人の世の 常なるを

流るる水を 眺むれば

夢はずかしき 涙かな

 

君がさやけき 目の色も

君くれないの くちびるも

君がみどりの 黒髪も

またいつか見ん この別れ

 

君がやさしき なぐさめも

君が楽しき 歌声も

君が心の 琴の音も

またいつか聞かん この別れ

 

その後、1962年に日活が小林旭主演で、映画『惜別の歌』を制作し、その中で小林旭がこの歌を歌い大ヒットしました。詩の内容とは無関係な映画でした。

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惜別の歌 小林旭

 

その他では倍賞千恵子さん、ちあきなおみさんはじめ多くの人がカバーしています。女性が歌うのもこれまたいいですね。正統派の倍賞さんに対し、ちょっとやさぐれた感じのちあきなおみさんの歌声も素晴らしい。

 


惜別の歌 倍賞千恵子 Baisyou Chieko


惜別の唄 ちあきなおみ

 

曲が出来た経緯を知ると、ますますその曲に対する作者の思いが伝わってくるようで、切なさが込み上げます。

 

それでは今日はこの辺で。