先日のキネ旬シアターは『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』でした。
監督:セルジュ・ゲンスブール
出演:ジェーン・バーキン、 ジョー・ダレッサンドロ、 ユーグ・ケステル
製作:1976年 フランス 1983年 日本公開
1976年の映画ですが、セルジュ・ゲンズブールの没後30周年を記念し4K完全無修正版がこの度上映されることになりました。R18です。
この映画、日本公開までに7年もかかっています。しかもその時は修正版です。この度、完全無修正ということで楽しみにしていました。
最近、昔の映画のデジタル修復版の上映が目立ちます。どうしたことでしょうか。
『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』は元々はセルジュ・ゲンズブールが1967年に書いた、ブリジット・バルドーとのデュエット・ソングです。ところがその内容が性行為を描写する歌詞で、ブリジット・バルドーの喘ぎ声まで入っていました。この二人は当時不倫の関係で、バルドーが夫にバレるのを恐れて、発売を許可しませんでした。その後。1983年にブリジット・バルドーは自身のバージョンの発売を許可しました。
2年後の1969年、ゲンズブールは女優で妻のジェーン・バーキンとデュエットし、これが発売されました。このバージョンもジェーン・バーキンの喘ぎ声が入っており、顰蹙を買いましたが、曲は大ヒットしました。しかし、一部の国では放送禁止の処置がとられました。
ジェーン・バーキンは1965年に女優としてデビューし、翌年のミケランジェロ・アントニーニ監督の映画『欲望』に起用され注目されました。その後もアラン・ドロンの『太陽が知っている』など数々の映画に出演し、またこの曲で歌手としてデビューしたのです。
一方、ゲンズブールはこの曲モチーフにした映画を作り上げました。タイトルは曲名そのままでした。脚本・監督・音楽を自身が務めました。
映画の内容は2人の若者と1人のボーイッシュな女性の三角関係を描いたものです。若者2人はゲイです。この仲睦まじいゲイの2人に美女が絡んで、ゲイの2人に亀裂が生まれます。そして結末は・・・。
最近では同性愛の映画やドラマがやたら多いですが、この当時はまだまだ少なかったように記憶しています。まさに時代を先取りしていたのでしょうか。
ジェーン・バーキンの魅力だった長髪が見事なショートカットになっています。
セルジュ・ゲンズブールは映画監督・俳優としても有名になりましたが、元々はシンガーソングライターでデビューしました。フランス・ギャルでヒットした『夢見るシャンソン人形』は代表曲の一つです。
ジェーン・バーキンとは正式に結婚はしませんでしたが事実上の妻でした。二人目です。この事実婚はジェーンの希望だったらしいです。女優のシャルロット・ゲンズブールは二人の間にできた娘です。
この何とも不思議な雰囲気を醸し出す映画は、年代は新しいですが、フランス・ヌーヴェルヴァーグの雰囲気を醸し出しています。フランス映画と言っても、小洒落た都会の町並みなどは一切出てきません。汚いゴミ捨て場や、寂れたドライヴイン、薄汚いラブホテルなどが舞台です。男二人の仕事はゴミ運搬業。仕事用のダンプカーのフロントガラスにはカラスの死体。ラブホテルにはハエが飛ぶ。女性の仕事は場末のドライブインのウェイトレスで店主は暴力的。男とのデートはゴミ捨て場。登場する男はゲイばかり。醜い女のストリップショー。汚れた便器の山。お騒がせ男、セルジュ・ゲンズブールの面目躍如でしょうか。
映画の冒頭で現在のジェーン・バーキンが登場し映画の紹介をしています。すっかりおばあちゃんになりました。その中でフランソワ・トリフォーがこの映画を絶賛したことが語られますが、なんとなくわかるような気もしました。
ゲンズブールとバルドー
それでは今日はこの辺で。